レポート第3回【ヘッドアンプ2次試作

 
◎ポップノイズ対策

 電源 ON 時/OFF時に発生する「ボッ、プツ・・」などの「ポップ音」を対策します。
 図20のように電源 ON 直後では出力が不安定で、これが「ポップ音」です。そこで、出力が安定したところでヘッドホンに接続することによりポップ音を防止することが出来ます。つまり、電源 ONから一定期間ヘッドホンを接続すれば良いわけです。
 このようにポップ音対策をするものをミューティング回路と言います。



 今回はDELAY(遅れ)時間制御を図21のようにマイコンにより行っています。リレー接点は制御していない場合、図20のように OFF 側です。電源ON直後から 5 秒間待ってからトランジスタをONにします。これによってリレーがONになります。
 待ち時間は回路定数によるのですが、今回は余裕を見て5秒間としました。

また、ミューティング動作中であることが分かるように電源ON直後から 5 秒間LEDを点滅させ、その後点灯します。

 電源OFF時のタイミングを図22に示します。

 図 22のように電源 OFF を検出し、ポップ音が出る前にヘッドホンをOFF させれば良いわけですが、このタイミング検出は少し難しいです。そこで、図23のように 2 連の電源スイッチ(例えば、トグルスイッチ)を利用し、電源スイッチ ON で「リレーON」、電源スイッチ OFF で「リレーOFF」となるように接続します。

◎フィラメント点灯方法の変更

 フィラメントの点灯は並列点灯と直列点灯があり、図 4 に並列点灯を示します。9 ピンはフィラメントのセンターピンでこれを GND に接続し、各真空管のフィラメントを抵抗Rを介して電源に接続します。
 フィラメントの定格電圧は 0.7V です。フィラメント専用の0.7V 電源を作るのは面倒ですから、抵抗Rの電圧降下を利用してフィラメント電圧が0.7V となるようにします。フィラメント定格は0.7V/17mAですから、フィラメントの抵抗は0.7V/17mA≒41Ωです。

 必要な抵抗 R は①式で求め、3.3V から供給する場合、計算値は152Ωとなりました。E24系列の中から150Ωを用いることになります。

 並列点灯の場合、図 24 d)の 経路で電流が流れますから消費電流は34mAです。

 図 25 は直列点灯の回路を示します。この場合、ピンはオープン(未接続)とし、片方のフィラメントへは
抵抗 R を介して電源を接続し、もう片方はGNDへ接続します。
 このように接続すればフィラメントが直列接続となり、必要な抵抗は②式で求めます。電源を 3.3V とすれ
ば計算値が 111Ωとなりました。これも E24 系列の中から110Ωとします。
 直列点灯時の消費電流は17mAです。1次試作では並列接続でしたが、2 次試作ではリレーなどが追加に
なって消費電流が増えます。
 外部電源であれば消費電流を気にする必要はありませんが、このヘッドホンアンプは乾電池(単3×6本の9V
)動作が基本なので、2次試作では消費電流が少ない直列点灯に変更します。

 

◎リレーの選択


 リレーを含めたミューティング回路を追加しましたので部品点数が増えて、基板面積も大きくなることが予想されます。特にリレーのコイル定格電流が重要で、リレー駆動電圧が低いほどコイル定格電流が大きくなります。
 電源が乾電池の9Vですから、一旦、5Vに変換(定電圧)したものをマイコンとリレーに供給する
ことにします。今回はOMRONのG6K-2P-Y-DC5Vを採用しました。表3のように汎用品のG5V-2よりかなり小型でコイル定格電流が少ないことが分かります。

 写真 9 に外観を示します。比較目的でG5V-2、DIP8ピンICを一緒に並べてみました。


 

◎サイズは以下のように変更しています。


 1次試作 45×100
 2次試作 50×100


◎アルミシャーシ変更

 1次試作では L形とし、フロントパネルに電源スイッチを配置する構造でした。2 次試作ではコの字形とし、リ

アパネルに外部 DC ジャックを実装できる形にしています。
 このヘッドホンアンプは乾電池(単3×6 本)内蔵が基本です。2 次試作でリレー等を追加しましたので消費電

流が約 60mA となりました。
 電池持続時間を気にしないように外部電源(市販のACアダプタ等)が接続できるようにDC ジャック取付穴を
追加しています。
 DCジャックの取付穴径はφ8です。MJ14ROHS 等の 2.1mmジャックを想定しています。また、電源スイッチ
取付穴はミヤマの MS500 シリーズまたはLinkman のトグルスイッチが適合します。

◎2次試作のまとめ 


 写真 10、11 に外観を示します。電池は輪ゴムを利用して写真 11 のように固定します。
電気的特性は消費電流以外は 1 次試作と同等です。消費電流は用いるオペアンプで異なり、AD8397 を用いた場
合、約 60mA です。フィラメントは温まると点灯します。周囲が明るいと点灯具合が良く分かりません。
 電源が ON になっているのが分からないので、ミューティング表示を兼ねた LED を追加したことは正解です。
 ポップノイズ対策を目的とした 2 次試作はこれで完了です。

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