レポート第5回【ヘッドホンアンプ MBK-6P1動作確認】


◎動作確認

★必要機材

 電圧チェックとバイアス調整が必要です。必要機材を以下に記します。

 ①デジタルテスタ

   電圧をチェックします。インピーダンス(抵抗)が高い部分なので一般的なアナログテスタでは測定できません。 必ずデジタルテス
  タを用いてください。

 ②アナログオシロスコープまたはデジタルオシロスコープ

   波形観測に用います。必ず必要というわけではありませんが、ひずみ具合が観測できます。

 ③オーディオ帯域信号発振(発生)器

   テスト信号に正弦波、1KHzを用います。ファンクションジェネレータで代用可です。
  後述する簡易正弦波発生器でも代用可です。

 ④オーディオ帯域電子電圧計
   ヘッドホン出力が最大となるようにバイアス調整し、これの振幅レベル確認用です。
  オシロスコープ(アナログ/デジタル)で代用可です。これもない場合、後述するデジタルテスタで代用します。

 ⑤測定治具
   測定がスムーズに行えるように治具を用意します。必要なものは入力接続用の3.5 ステレオプラグ、出力接続用にダミー抵抗を付け
  たΦ3.5 ステレオプラグ。

 写真 11 に外観を示します。入力用は私の場合、カバーを外した状態で用いています。 は白、R は赤などの短めな線を付けたほうが使い勝手が良いと思います。 出力側は抵抗をはんだ付けします。抵抗値は用いるヘッドホンのインピーダンスに合わせておきます。私が良く用いているヘッドホンのインピーダンスは 32Ωなので、33Ωの抵抗を接続しています。100mW の出力を想定した電力容量なので、1/4Wでも十分です。

 プラグ先端の L/R 関係は写真 11 のとおりです。プラグ端子と導通チェックして確認しながら抵抗をはんだ付けしてください。


 参考用として写真 12 に必要機材の例を示します。


★電源電圧チェック 

  電源を ON する前にVR2、VR3 の調整位置をの調整位置を図 7 のようにしておきます。電源を電源を ON するとすると 5 秒ほど LED 
が点滅し、その後点灯します。

 真空管は2 か所青く光ります。VR2、VR3 の調整位置が左方向最大の場合、真空管は光らないので注意してください。

デジタルテスタの GND リードを写真 6 で作った GND 端子に接続します。すばやく各3端子レギュレータの出力電圧をチェックします。

   IC2 → 5V

   IC3 → 3.3V

 

 チェックポイントはIC2 がシルク文字 O のピン、IC3 は図 7 のポイントです。各電圧が極端にずれている場合、各ICの実装方向、はんだ付けを見直してください。

★バイアス調整

 図 8 のように測定治具を用いて各測定器を接続します。音量ボリューム VR1 は maxにしておきます。出力が飽和(クリップ)しない0.5Vrms 程度となるように発振器のレベルを調整します。


 NJM4558 などのオペアンプでは早くクリップしてしまうので0.1Vrms 程度の出力となるように発振器レベルを調整します。
電子電圧計を用いる場合も波形具合が分かるようにオシロスコープを併用することをお勧めします。
各出力が最大となるようにVR2,VR3を調整します。調整位置はL/Rが同じ位置になるとは限りません。


★各部の DC 電圧チェック
 図 9 のように各部のDC 電圧をチェックします。 フィラメントの規格は0.6V~0.8V です。直列点灯していますので1,2 ピンとGND 間は 1.2V~1.6V の範囲となります。この例では1.32V の結果ですから規格範囲内です。

 各プレート電圧(R5、R6)は図 9 の結果となりました。抵抗に誤差±5%のカーボン抵抗を用い、真空管のバラツキもありますから、この結果より若干ずれることもあります。極端に値が違う場合、用いた抵抗の値を確認してください。

★機材が無い場合

 発振器が無い場合、図10 の簡易正弦波発生器を用います。動作原理については第1回目のレポートを
参照願います。

 電子電圧計の代用としてデジタルテスタを用います。機種によっては精度を保証していないかもしれま せん。第 1 回目のレポートを参照願います。




 ブレッドボードで組める回路規模です。なにかと便利な装置ですので、写真13のようにユニバーサル基板
で組むと良いです。

 得られる出力レベルは接続する機器と電源電圧で異なります。3V 電源(単3×2本)を用い、本ヘッドホンアンプに接続した状態で約0.32Vrmsが得られました。

 簡易信号発生器の動作確認は次のように行います。

  電源を入れてIC1の1ピン出力周波数をチェックします。デジタルテスタのファンクションを周波数測定に切り替えてチェックします。

 ピンの出力レベルはほぼ電源電圧になり、例えば3V電源で約3V、6V電源で約6Vになります。 使用するデジタルテスタの仕様を確認してください。 今回は

 LinkmanLDM-81Dを用いました。手順は以下のように行います。

  ①ファンクションを「 Hz 」にしてIC1の1ピンを観測。

  ②1KHz付近の測定結果になるはずです。カウントしない場合、配線チェックを行う。

 
 抵抗、コンデンサの誤差によって1KHz からずれる場合があります。1KHz になるためのR4の設計値は72kΩです。
私の場合、68k と 3.9kのカーボン抵抗を直列接続しました。 結果、周波数は 898Hz となりました。

 1KHz に対して± 100Hz位は許容範囲です。気になる場合または正確に合わせたい場合は R4 を 51kΩの カーボン抵抗と 50kΩの半固定抵抗を組み合わせて調整してください。

 LDM-81D のファンクションを「V」に切り替えて「SELECT」で「AC」を選択します。これで AC レベルが測定でき、VR1 最大で 0.32Vrmsより大きな値が表示され、VR1 を調整することによってレベルが変化することを確認してください。これで簡易正弦波発生器は正常に動作しています。

 
 写真 14 に調整風景を示します。手順は以下のとおりです。
 
  ①簡易正弦波発生器の出力にデジタルテスタを接続する。ファンクションは「V」の「AC」。
  ②基板のJ1に測定治具を介して信号を入力する。
  ③デジタルテスタの測定値が0.15V付近となるように簡易正弦波発生器の VR1を調整する。
  ④基板のJ2 に抵抗付の測定治具を接続し、デジタルテスタを接続する。(「V」の「AC」)
  ⑤測定値が最大となるように該当チャンネルに相当するVR2、VR3を調整する。
 
 J2 出力レベルが 0.5V 程度であればOKです。入力信号レベルは0.15V きっちりにする必要はありません。
 
 例えば入力が 0.155V、出力が 0.552V だったとすれば電圧GAINは以下の通りです。バラツキがありますので10dB~12dBの範囲になっていれば正常です。

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