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RFとBluetoothの比較 

Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2018-02-28
マルツ掲載日:2019-03-04

 HID(ヒューマンインターフェースデバイス)からIoT対応のリモートセンサまで幅広い用途でのワイヤレス接続について、設計者には多くの選択肢があります。必要となる基本的な判断の一つは、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBeeなどの標準ベースのRFインターフェースにするか、独自のRF PHY(物理レイヤ)設計とプロトコルにするかを選択することですが、多くの設計者はこれに頭を悩ませています。

 どちらを選ぶかを判断する理由はたくさんありますが、コスト、セキュリティ、消費電力、相互運用性、設計時間、干渉面の堅牢性、共存性、遅延、および認定要件に関する相対的なトレードオフも多数あります。これらのトレードオフの多くは相互に関係するため、設計者は最初に設計要件を確認してから、その要件に従って最適化する必要があります。

 この記事では、標準のBluetoothインターフェースと独自のRFプロトコルのどちらかを選択するか判断する際の検討事項について説明します。また、Bluetooth 5モジュールの概要を説明した後に、独自のプロトコルを実装できるシリコンソリューションについて、迅速な起動および実行方法に関するガイドラインとともに示します。

独自のRFの利点と欠点

 設計に、セキュリティや低電力、小型フットプリントおよびパフォーマンスで最適化が求められる場合は、独自のPHYとプロトコルが適しています。セキュリティは、ガレージドアオープナからIoTデバイスまでさまざな用途で重要です。独自の無線を使用すると、セキュリティに多くの方法で対処できます。まず、独自設計では、あまり有名ではないRFインターフェースとなりハッキングが難しくなるため、「隠匿によるセキュリティ」が確保されます。また、独自インターフェースはポイントツーポイント、つまり広範囲のネットワークに接続しない閉鎖的なシステムで運用される傾向があるため、隠された状態が維持されます。

 最後に、独自インターフェースの設計者は、他のメーカーのセキュリティアルゴリズムと相互運用可能である必要がないため、独自の高度な暗号化アルゴリズムを開発したり、すでにあるアルゴリズムを微調整できます。違いは、セキュリティの利点そのものにあります。

 独自の無線設計は、Wi-Fiネットワークや電子レンジ、コードレス電話、その他の低電力ワイヤレスネットワークの干渉面で、堅牢な接続を確保する場合は有利です。規格に縛られることがないため、設計者はDSSS(直接スペクトラム拡散)やFHSS(周波数ホッピングスペクトラム拡散)などの手法を使用してスペクトラムを柔軟に活用できます。さらに、予測したリンクバジェットに基づいて独自の優先コーディング方式を採用し、スループットを高くしたり、消費電力を低く抑えることができます。この柔軟性は、データパケット構造にも適用されます。標準ベースのワイヤレスデバイスと相互運用を確保するために必要なパケットオーバーヘッドなしで、用途のニーズに合わせてパケット構造を合理化できます。

 ハードウェア設計の観点からは、十分に理解したパフォーマンス要件とそれらの要件が後の段階で変更されないという保証によって、独自のRFインターフェースの設計者はスペース、電力およびパフォーマンスを最適化できます。設計者は、用途のニーズを満たすために必要な機能のみを含めることでこれを実現できます。

 独自のRFには多くの利点がありますが、考慮すべき点も多数あります。一つ目はコストです。カスタムRF IC設計と関連ソフトウェアのNRE(非反復エンジニアリング)コストを正当化するには、特に低コストデバイスの場合、予想ボリュームは100,000を超えます。コストと密接に連動するのが設計時間です。特に、RF設計の予測できない変化や十分に裏付けされたRF専門知識が不足している場合、適切な設計に必要なファームウェアとソフトウェアの開発にも時間が必要です。

広く採用され、いつでも適用可能なBluetooth

 その対極にあるのがBluetoothです。もともとは、ユーザーを悩ませていたHIDなどのデバイス向けに、簡易なポイントツーポイントケーブルの置き換え技術として設計されたBluetoothは、ワイヤレスオーディオやデバイス間の接続ソリューションとしてまたたく間に普及しました。Bluetooth SIG(Special Interest Group)の厳格な管理によって、Bluetoothは十分に理解され、設計者は、ハードウェアソースとは関係なく、使用しているデバイスが他のBluetooth対応デバイスと接続し、相互運用可能であることに確信を持つことができます。広範囲な採用と相互運用可能なデバイスにより、多くのハードウェアとソフトウェアが誕生し、コストが削減され、ワイヤレスインターフェースを必要とする設計向け市場への参入が加速しました。さらに、Bluetoothは数年にわたって進化し続けています。

 Bluetoothは、常に2.4GHzの工業、科学、医療(ISM)用帯域で動作し、79の1MHzキャリアのGFSK変調から始まり、スループットは1Mビット/秒です。これをBR(Bluetooth Basic Rate)と呼びます。IoTによってさらに多くのワイヤレス接続デバイスが普及した場合でも、その適応型FHSSエンコード方式により干渉面の堅牢性は引き続き維持されます。データレートを高くするために、Bluetooth 2.0+Enhanced Data Rate(EDR)では、π/4-DQPSK(差動四位相偏移変調)および8DPSK変調を使用してそれぞれ2Mビット/秒および3Mビット/秒のレートを実現しています。

 BluetoothはSIGによって厳格に管理されていますが、設計者は2010年のBluetooth 4.0 Core Specificationの導入に伴う変更について詳細に確認する必要があります。この変更時に、以前にBluetooth Smartとして販売されていたBLE(Bluetooth Low Energy)が導入されています。BLEは、Bluetooth Classicと下位互換性がないため、設計者はこの点に注意する必要があります。

 BLEの主要な目的は低電力です。低電力を実現するために、デバイスが常時接続されるBluetooth Classicの接続指向アプローチから、必要なときに短時間のみ接続する非接続型方式に移行しています。用途は、スマートウォッチなどのウェアラブルやIoT用センサです。Bluetooth SIGは、メンバーシップとその用途の多様なニーズに合わせて仕様の改善を続けています。その進化の詳細については、「IoTの要件を満たすBluetooth 4.1、4.2、および5対応Bluetooth Low Energy SoCおよびツール(第1部)」を参照してください。

 最新バージョンのBluetooth 5では、BLEのデータレートが1Mビット/秒から2Mビット/秒へと倍になり、128kビット/秒接続の範囲は、より強力な転送エラー訂正(FEC)を使って4倍の50mまで拡大しました。データレートが高くなり、特定のタイムスロットで送信されるパケット数を増やすことができます。それにより、デバイスは延長された時間、低電力またはアイドルモードで維持できるため、消費電力が削減されます。

 範囲が広くなったため、設計者はより柔軟に、ビーコンを含むどのBluetoothデバイスについても距離に対してデータレートをトレードオフできるようになりました。ビーコンはバッテリ駆動のBLEデバイスで、そのIDを近隣のモバイルデバイスにブロードキャストします。それらのデバイスは、ビーコンに近づくと特定のアクションを実行できます。これは広告主に人気があり、正確な屋内および屋外トラッキングも可能です。

 ただし、SIGは独自のRFインターフェースの設計者も実行できるもう一つの興味深い調整も実装しています。この実装では、ペイロードに対するオーバーヘッドの比率を下げているため、指定された量の「実際の」データを送信するために必要な送信回数が削減され、消費電力をさらに下げることができます。

 始めはシンプルなケーブル置き換え技術であったものが、非常に有効な技術に大きく様変わりしました。その結果、設計者は労力や費用を費やして独自のRFインターフェースを設計するよりも、迅速で簡単なBluetoothソリューションを求める傾向が強くなっています。

Bluetoothの起動と実行

 こういったBluetoothインターフェースを選択する傾向は、製品化までの開発期間の短縮や設計バジェットの縮小により、必然的なものへと変化しています。幸いにも、多くの設計では、市販のBluetoothモジュールを収めるスペースが十分あるため、設計チームはそれぞれの最終用途と差別化に集中できます。

 このようなモジュールの1つが、RigadoのBMD-330 Bluetooth 5モジュールです(図1)。Bluetooth用のモジュールは多数ありますが、このモジュールはボードにアンテナが内蔵されているため、特に興味深く便利です。アンテナのマッチングと配置はRF設計の優れた機能の一つであり、設計者の負担を軽減して時間を節約し、最適な信号結合を実現することができます。

図1:BMD-330 Bluetooth 5モジュールには、実装を簡素化および迅速化するためのアンテナと整合回路が付属しています。(画像提供:Rigado)

 このモジュールは、規制当局による承認済みで、独自のオンボードDC/DCコンバータ、インテリジェント電源コントロールを備え、寸法9.8×14.0×1.9mmの完全なソリューションです。アンテナは付属していますが、効果的に放射するためには適切な地板が必要です。また、モジュールのアンテナ部分から延びるエリアは銅やその他の金属がない状態にしてください。モジュールはプリント基板の端に置き、アンテナは外向きにします。モジュールをエンクロージャに取り付けるときは、アンテナの近くに金属がないことを確認してください。金属があると、パフォーマンスに影響します。

 このモジュールは、フリーエアオペレーション用に設計およびチューニングされているため、ポッティング、エポキシ、オーバーモールド、絶縁保護コーティングはパフォーマンスに影響する可能性があり、リンクバジェットを仕様範囲内に収めるため、適用した後に追加の測定が必要です。

 このモジュールは、Nordic SemiconductorのnRF52810SoC(システムオンチップ)に基づいています(図2)。64MHzを記録したARM® Cortex®-M4 CPUを採用し、192KBのフラッシュと24KBのRAMを搭載しています。

図2:BMD-330モジュールは、Nordic SemiconductorのnRF52810 SoCを中心にして作成されており、Arm® Cortex®-M4 CPUと2.4GHzの無線を搭載しています。(画像提供:Rigado)

 これにはそれほど多くのフラッシュスペースがないため、Rigadoは出荷時にはモジュールにファームウェアが搭載されていません。ブートローダがないため、SWD(シリアルワイヤデバッグ)を使用してファームウェアをロードする必要があります。ロード後は、Nordicが提供するSoftDevicesと呼ばれる幅広いプロトコルスタックを利用できます。これらはNordicのWebサイトからダウンロード可能な、コンパイル済みの事前リンクされたバイナリファイルです。nRF52810 SoCを使用するBMD-330は、S132(BLEセントラルとペリフェラル)SoftDeviceおよびメモリが最適化されたS112(BLEペリフェラル)SoftDeviceをサポートします。

 BMD-330モジュールの主要な仕様には、+4dBmの送信電力と-96dBmのレシーバ感度(BLEモード)が含まれます。3V電源で動作し、送信モードでは+4dBmで7.0mAおよび0dBmで4.6mA消費します。受信モードでは、1Mビット/秒で4.6mA、2Mビット/秒で5.8mA消費します。送信と受信両方の仕様で、DC/DCコンバータは有効になっています。無効な場合は電流が増加します。

独自とBluetoothのスイートスポットの比較

 完全なカスタムの独自無線設計と標準Bluetoothの間に、もう一つのオプションがあります。それは、市販の無線トランシーバを使って設計者が独自のプロトコルやコーディング方式を開発する方法です。Ant、Thread、ZigBeeなどの市販のバージョンを採用します。使用できるシリコンの価格が下がり、幅広いソフトウェアサポートも用意されているため、このオプションは、差別化、最適化の自由度、セキュリティ強化のオプションを実現すると同時に、コストを最小に抑え、設計スケジュールも維持する必要のある設計者にとって「スイートスポット」になります。

 この方法に関心のある設計者向けに最適なオプションは、Silicon LabsのEFR32FG14 Flex Geckoの独自のプロトコルファミリSoCです(図3)。

図3:Silicon LabsのEFR32FG14 Flex Geckoは、独自のソフトウェアを追加または開発できるソリッドハードウェアプラットフォームを提供します。(画像提供:Silicon Labs)

 BMD-330と同様に、EFR32FG14はARM® Cortex®-M4コアも使用しますが、このチップは低電力のIoTアプリケーションに対象を絞っているため、64MHzではなく最大40MHzで動作します。256KBのフラッシュと32KBのRAMが搭載されています。このチップは2.4GHzとGHz未満(915MHz)両方の動作をサポートし、アンテナネットワークマッチングに対するガイドが提供されます。また、このチップはアンテナダイバーシティもサポートし、周波数選択性フェージングの影響を抑えます。

 柔軟なI/Oおよびセキュリティ機能も多数組み込まれています。たとえば、MCUペリフェラルの自律的な相互作用を可能にする12チャンネルのPeripheral Reflex System、最大32個のGPIO、およびAutonomous Hardware Crypto AcceleratorやTrue Random Number Generatorがあります。2.4GHzとGHz未満両方の電源アンプもチップに組み込まれています。

 開発プロセスに利用できる、EFR32FGライン向けのSilicon Labs SLWRB4250Aボードがあります(図4)。これには、SoC、ヘッダ、水晶、アンテナ整合回路、およびソフトウェアが組み込まれています。

図4:SLWRB4250A Flex Gecko無線ボードは、独自の低電力ワイヤレスインターフェースを試すために必要なハードウェアを提供します。(画像提供:Silicon Labs)

まとめ

 完全に独自のRF設計方法と標準のBluetooth無線のどちらかを選択するにはさまざまな理由があります。コスト、時間、パフォーマンス、サイズ、セキュリティ、その他多くの要素の観点で設計と用途の要件を満たすという点では、それぞれに役割があります。ただし、市販シリコンのコストや時間の節約に関する多くの利点、および独自差別化のレベルを追加できる柔軟性を求めている設計者向けに、ベンダは構築時に利用できるソリッドハードウェアプラットフォームも提供しています。

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