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センサ搭載前にドローン設計のトレードオフを理解する

著者 Steve Taranovich(スティーブ・タラノビッチ) 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-11-19
マルツ掲載日:2020-02-10


 ドローンの応用はますます増えており、非常事態や災害の初期対応ツールキットにもドローンが含まれるようになっています。たとえば、パリのノートルダム大聖堂の火災では、規模、熱、炎の広がりについての初期報告に利用されました。

 このドローンには建物内に残っている人を探すためのサーマルイメージング機能もありました。その後は、被害状況を評価するために利用されました。こうした用途では、煙や炎が発生した複雑な条件のもと、それなりの解像度で視界を確保するという課題が生じます。

 このような課題への対処法として、多くのセンサをドローンに積むのは魅力的かもしれませんが、設計時には、ドローンはバッテリ駆動であることと、多くの場合、コストが重視されることに留意する必要があります。そのため、機能、コスト、サイズ、重さ、消費電力(SWaP)の絶妙なバランスを取る必要があります。センサやイメージング機器をドローン設計に追加することを検討する際には、このバランスを見極めることが主要課題となります。

 この記事では、設計時にセンサをドローンへ追加する際に考慮すべきアーキテクチャ上のトレードオフについて説明します。説明の中で、電源には特別に注目します。電源はよく磁石が使用されるため、重くなったり、貴重なスペースを占有したりするからです。また、Texas Instruments、Efficient Power Conversion、Analog Devices、Bosch Sensortec、STMicroelectronics、SparkFun Electronicsなどのベンダーから提供されている好適な電源およびセンサソリューションについても紹介します。

ドローンのアーキテクチャ設計で考慮すべきこと

電源:設計者は、ドローンの性能を最適化するために特に注力すべき分野をはじめに把握し、次にドローンの物理的サイズと重量を最小化する方法を探ります。そのためにまずは、できるだけ効率の良い電力供給を実現することです。これが電源全体のサイズと重量を最小化することにつながり、ひいてはドローンをより小さく軽くすることになります。

 ドローンはバッテリで動作するので、電源効率が良ければ、それだけ小さく軽いサイズのバッテリで動作が可能です。ドローンのバッテリとして一般的に選ばれるのは、充電式リチウムバッテリ(リチウムイオンやリチウムポリマータイプ)でしょう。特に、ワイヤレスチャージャを使用して地上またはホバリング状態で充電する場合や、地上で外部チャージャを使用して充電する場合は、この選択となります。充電式ではない通常の電池を電源として使い、切れたら交換することもできます。

 DC/DCコンバータを選定する際には、ロータモータから発生する逆起電力(BEMF)の高電圧パルスを考慮して、広範囲入力の機種を使用する必要があります。モータが減速すると、DC/DCコンバータの入力にこのBEMFが流れます。BEMFは、ロータモータに電力供給するDC/DC変換のたび、その直後に発生するからです。

 Texas InstrumentsのDC/DCパワーコンバータICであるLM5161は、ドローンの電源に最適な選択肢です。なぜなら、不連続通電モード(DCM)動作向けにプログラムされた場合、何らの付加的な外部フィードバックリップル注入回路なしで、厳密に安定化された降圧出力を提供するからです。

 また、ハイサイドとローサイドのMOSFETが内蔵されているため、ボード上のスペースを節約できます。そして、信頼性を高めるために、ピークおよびバレー電流制限回路により、過負荷状況から保護しています。予防的な追加機能としては、不足電圧ロックアウト(UVLO)回路があり、独立して調整可能な入力不足電圧閾値およびヒステリシスを提供します。

 ドローンには、多くのセンサ(対応するセンサ融合ICとともに)、メインプロセッサ、プロペラモータが搭載されると予想されます。そのためには、優れたバッテリ制御システムが必要です。

 電力供給アーキテクチャでは、通常、パワートランジスタを使用するところで、窒化ガリウム(GaN)パワートランジスタを使用する選択があります。GaNは、大きさや専有面積を最小限に抑えながら、最大限の性能効率を実現します。

ワイヤレスパワー - ホバリング中の充電 [研究中(1)、(2)、(3)]:これは理想的です。なぜなら、ドローンを着陸させて電源を落とし、充電して再び離陸させると、ロータモータの起動と離陸動作で、バッテリから相当な電力が奪われるからです。Efficient Power Conversionなど、多くの企業がホバリング中のワイヤレス充電について研究しています。電源の選択肢として、GaN FETを使用したワイヤレス充電アーキテクチャがあります。その例が、Efficient Power ConversionのEPC2019です。

 GaNベースのFETでは、13.56MHzでスイッチングが可能です。従来のシリコンFETでは実現が難しいスイッチング周波数です。この高いスイッチング周波数は、電源の磁石のサイズと重さを最小化することにもつながります。また、GaNトランジスタはシリコントランジスタの5分の1~10分の1の大きさながら、同程度の電力を扱うことができます。このタイプの電源を使用すれば、ドローンは着陸せずに、ワイヤレス充電ベース上でホバリングするだけで済むようになります。

 多数の評価ボードや開発ボードが提供されており、ワイヤレスパワーを使った製品を市場投入するまでの時間を短縮できます。EPC2019 GaN FETのドローン内組み込み向けに、Efficient Power Conversionはワイヤレスパワーレシーバ開発ボードEPC9513を提供しています。

 設計者にとって、この開発ボードの重要なポイントは、AirFuel標準に対応していることです。世界中のワイヤレス充電製品と互換性のある、ワイヤレス認証製品の設計が可能です。Efficient Power ConversionにボードのGerberファイルを請求することもできるため、このボードの最適なレイアウトを再現できます。

太陽光発電:電源のもう1つの選択肢は、太陽光エネルギーを利用してドローンのバッテリを充電することです。この場合、PowerFilm Inc.のPT15-75が良い候補となります。

 PT15-75は、Analog DevicesのバッテリチャージャICであるLT3652と組み合わせることで、優れた小型バッテリチャージャ設計を実現できます(図1)。なお、パネルを負荷に接続し、電流を供給している状態で、開回路電圧(Voc)が出力になることは、実際にはありません。

図1:この2Aの太陽光発電バッテリチャージャを搭載することで、信頼性と効率性の高いドローン電源を実現できます。サーミスタRNTCは、太陽電池(PT15-75など)の最大電力レベルにおける温度係数を補償するために追加されています。(画像提供:Analog Devices)

 LT3652の入力安定化ループには、ソーラーパネルの最大電力動作点を判定する機能もあります。これにより、太陽エネルギーからの変換効率を最適化し、バッテリに最大の出力電力を供給できます。

センサ:センサには、それ自体の有用性に加えて、ドローンの制御性を向上させる働きもあります。ドローンの制御に関して言うと、自動レベルモード、高度維持モード、軌道モードなど、目的の物体またはポイントの周囲を旋回するモードは、センサによって実現しています。こうした付加機能には、高性能な慣性計測ユニット(IMU)と気圧センサが使用されており、優れたユーザーエクスペリエンスだけでなく、特殊用途や商用ドローンに必要な高い信頼性を実現しています。

 ドローンの性能向上が求められる場合がありますが、それには、ドローンの向き、位置、バランスを保つために、出力信号のドリフトがきわめて低いジャイロスコープが必要になるかもしれません。温度変化の激しい条件では、なおさらです。

 これは、加速度計とジャイロスコープを組み合わせたBosch SensortecのBMI160によって実現できます。9軸のセンサデータ融合機能を持つ、小型かつ低電力のIMUです。寸法は2.5mm×3.0mm、高さ0.83mmで、ジャイロスコープと加速度計がフル動作モードのときでも925µAしか消費しません。1.71V~3.6Vの電力供給で動作します。

 デジタル気圧センサBMI160に温度センサを組み合わせることで、垂直速度の計測に使用できます。これは、GPSナビゲーション向上や、ドローンの高度判定に役立ちます。気圧計は、精度を保つために、ときどき海面気圧で較正することをお勧めします。

 このようなアーキテクチャへ組み込むのに適したICとして、Bosch Sensortecの気圧および温度センサBMP388があります。このセンサモジュールは、実装面積はわずか2×2mm2、高さは0.88mm、電力消費は1Hzでたった3.4µAという低さであり、バッテリでの動作にきわめて適しています。標準相対精度は±8Pa、標準絶対精度は±50Paであり、ドローンのホバリング能力と障害物回避能力を向上させます。

 多軸で動きを検知する場合、STMicroelectronicsのiNEMO IMUシステムインパッケージ(SiP)モジュールISM330DLCTRには、モノリシック6軸ICに加速度計とジャイロスコープが磁気計とともに組み込まれています。このような構成により、ドローンはホバリング中に、水平、垂直、回転の安定性を保つことができます。プロフェッショナルグレードのドローン撮影や3D映像といった用途には、6軸ジャイロの安定化機能が必要ですが、ISM330DLCTRにはそれが搭載されています。

 ジャイロスコープは、ドローンの向きを計測および維持します。3つの加速度計を組み込み、それぞれ異なる軸に向きを合わせておくことで、どの軸においてドローンが動いても、その度合いを検知できます。これにより、ドローンのロール、ピッチ、ヨーに関する情報を収集し、その情報をドローンの比例積分微分(PID)コントローラに返すという処理が向上します。

 磁気計は、軌道修正のために、地球の北向きの地場の強さと方向を計測します。磁気計は小まめに較正しましょう。電力線やモータなど、強い地場を発するあらゆる電気機器から影響を受ける可能性があります。

 突風などの外力によって生じるドローンの動きは、加速度計によって検知され、PIDコントローラにリレーされて、PIDコントローラがモータを調整して補償します。

レンジファインダ:着陸、ホバリング、物体からの距離

 ドローンが安全に着陸したり、ワイヤレス充電中にホバリングしたり、飛行中に物体を感知して衝突を回避したりするためには、良いセンサが必要です。この測距には、音や光を使用します。

超音波レンジファインダのセンシング:ドローンの着陸、ホバリング、地上追尾機能は、超音波センサを使用することで実現できます。ドローンは着陸動作中に、ドローン下部から着陸場所までの距離を検知する必要があります。GPSと気圧計もこの制御機能で使用されていますが、安全に着陸するためには、距離のセンシングが重要です。

 また、安全にホバリングしたり、地上追尾したりする際には、一定の高さで飛行しなければならないことがあり、この場合にも超音波センサが役立ちます。このような着陸支援、ホバリング、天井検知のための測距センサの1つが、MaxBotixの超音波Time-of-Flight(ToF)測距センサボードMB1010-000です。

ToFについて

 上記のすべてのケースでToF方式を使用する必要があります。ToFとは、超音波が対象物に到達するまでの時間と、反射した信号がドローンのセンサに戻るまでの時間を意味します(図2図3)。

図2:設計者は、ドローンの着陸、ホバリング、ワイヤレス充電時のToFの概念を理解しておく必要があります。(画像提供:Texas Instruments)

図3:超音波ToFの3段階。ドローン設計では、はじめに送出した音(1)、無音(2)、受信したエコー(3)により、正確なレンジ検出を行います。このセクションで説明したハードウェアに関するアドバイスを実践する際に、この図を理解し、さらにこの記事で紹介した評価ボードやセンサを使用すると、飛行の安定、障害物の回避、ワイヤレス充電の最適化という目標達成に役立ちます。(画像提供:Texas Instruments)

 ドローンから対象物までの距離を計算するには、以下の式を使用します。

    

 Texas Instrumentsから、超音波近接センシングの評価モジュールPGA460PSM-EVMが提供されており、設計にかかる時間を短縮できます。

LiDARレンジセンシング:距離センシングのもう1つの方法は、Light Detection and Ranging(LiDAR)とパルスレーザを使用することです。ToF LiDARシステムから得た情報は、3D画像の生成にも使用できます。LiDAR技術は、高い精度と分解能を実現するとともに、広い範囲をカバーできます。

 光レーザ測距センサを選択することもできます。その一例であるSparkFun ElectronicsのSEN-14032は、40mを対象レンジとするレーザベースの光測距センサです。I2Cでこのセンサとインターフェース接続する場合は、外部マイクロコントローラが必要です。

 このタイプのLiDARに使用されるアーキテクチャは主に2種類あります。ソリッドステートLiDARと、モータ式の視界360˚回転LiDARです。どちらも使用する原理は同じで、レーザで光線を送出します。ソリッドステートの場合、鏡を使ってスキャンします。一方、回転ディスクでスキャンするアーキテクチャでは、モータによって回転するディスクを使用します。

 さらに第3のLiDARがあり、これはフラッシュLiDARとして知られています。多数の短いパルスを同時に射出し、カメラチップを使用してパルスの反射を受け、そしてToFを計測します。フラッシュLiDARは解像度がきわめて高いのですが、30m程度が限界です。

環境のセンシング

サーマルイメージングカメラ:ドローンに搭載したサーマルイメージングカメラで、物体や物質の熱反応や温度を検知し、それを静止画像か動画として表示します。パリのノートルダム寺院の火災では、サーマルイメージングカメラによる観察と追跡が行われました。サーマルイメージングカメラでは、わずか0.01˚Cの熱さの違いを検知できます。

 ドローンのサーマルイメージングが活用されている重要な分野がもう1つあります。それは地震や大型ハリケーンの後の災害復旧です。こうした災害時には、損傷または倒壊した建造物の中に、人が取り残されている可能性があります(図4図5)。

図4:倒壊建造物をドローンの目で見ることは、従来のカメラを使ってできる重要な第一歩です。次の段階として、サーマルイメージングカメラを使用すると、がれきに埋もれて逃げ遅れた人の体熱を感知できるようになります。(画像提供:IEEE(4))

図5:災害時に人を発見して命を救うツールを設計することができます。この逃げ遅れた人の画像は、消防隊の訓練中にDJIのドローンを使用して撮影したものです。(画像提供:Industrial Equipment News/Menlo Fire UAS/Drone program、協力:AP)

 はじめてサーマルイメージングをドローン設計に使用する場合、良い方法の1つは、FLIR Leptonのマイクロサーマルカメラ500-0771-01などの製品を使用することです。このカメラのスペクトルは800~1400nm、シーンダイナミックレンジは0~120˚C、定格消費電力は150mW(動作中)、650mW(シャッター時)、5 mW(スタンバイ)です。

湿度、圧力、温度のセンシング:大気条件を判断するために、SPIインターフェースを備えたBosch Sensortecのデジタル湿度、圧力温度センサBME280を使用できます。コンパクトに一体化されており、寸法は2.5×2.5×0.93mm、消費電力はスリープモードでわずか0.1µA、最大時(3つのパラメータすべてのセンシング時)でも3.6µAです。

マルチセンサ開発キットによる迅速な製品化

 Dialog SemiconductorのDA14585IOTMSENSORは、Bosch Sensortecの環境センサとTDK Invensenseのモーションセンサを使用したマルチセンサ開発キットです。設計者にとって、このキットの重要なポイントは、ドローンのセンサ融合機能の実験と開発をするのに良いプラットフォームであり、製品化までの時間が短縮されるということです。

 低電力のガス、湿度、圧力、温度センサBME680のほか、加速度計、ジャイロスコープ、磁気計が搭載されています。DA14585IOTMSENSORのセンサ融合機能により、センシング全体の性能を向上させながら、同時にドローンのバッテリ持ちを良くするために、この機能がどのように使えるかを知ることができます。

まとめ

 ドローンには高い機能性と長時間飛行が求められるため、その設計には、ほかにない難しさがあります。どのような設計をする場合でも、プロジェクトの要件を満たす最適なアーキテクチャを実現するには、そのドローンに求められる主要タスクを知った上で計画を立てる必要があります。

参照資料
(1)ドローンよ…高く、高く、遠くへ
(2)ドローン空中充電のための軽量ワイヤレスパワー転送、Samer Aldhaher、Paul D. Mitcheson、Juan M. Arteaga、George Kkelis、David C. Yates、IEEE 2017。
(3)ワイヤレスパワー転送の効率を安定化させる非線形パリティ時間対称モデル:飛行中ドローンのワイヤレス充電プラットフォームへの応用、Jiali Zhou、Bo Zhang、Wenxun Xiao、Dongyuan Qiu、Yanfeng Chen、IEEE 2018。
(4)DronAID:レスキューのためのスマートな人体検出 Rameesha Tariq、Maham Rahim、Nimra Aslam、Narmeen Bawany、Ummay Faseeha、IEEE 2018。




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