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高精度の産業用センシングシステムフロントエンドの設計

著者 Bonnie Baker 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-05-02
マルツ掲載日:2019-07-29


 産業用およびプロセス制御アプリケーションは、データフロー上流での意思決定のために温度・圧力・歪みに関する高精度のデータを広範に収集します。開発者にとっての課題は、これらのアプリケーションが、周波数領域で高い精度を維持するために複数の高精度チャンネルを必要とすることです。

 この記事では、高精度かつ高性能の産業用センシングおよび信号変換フロントエンドの主要コンポーネントとパラメータ要件について説明します。精度に関してはノイズが決定要因となるため、最終的に適合するソリューションがノイズの問題を解決します。

システム概要

 高精度の18ビット産業用センシングフロントエンドシステムは、コスト効率が良く、絶縁された複数のチャンネルデータ収集(DAQ)構造から構成されます。これにより、産業用信号レベルを管理できます。入力から出力へ記述されるマルチチャンネルの高精度回路は、シングルエンドまたは差動入力チャンネルに構成可能な8入力マルチプレクサで始まります(図1)。これらのマルチプレクサ入力は、温度、圧力、および光学センサからの入力など、プロセス制御用のさまざまなセンサ入力を受信します。


図1:複数センサ入力用の8入力マルチチャンネル高精度回路は、シングルエンドまたは差動入力チャンネルに構成可能な入力マルチプレクサで始まります。(画像提供:Bonnie Baker)

 図1では、「PGA」として示されるプログラム可能ゲイン計装アンプ(PGIA)が、同様の入力および出力振幅電圧機能をもつ入力マルチプレクサの後に続きます。マルチプレクサとPGIA段では、最大±10Vの高電圧入力を管理できます。

 コモンモード電圧およびPGIAの広範な電圧出力振幅は、18ビットA/Dコンバータ(ADC)の単一電源入力範囲と一貫性がありません。ADC用の信号電圧範囲を準備するには、システムにファンネルアンプが必要です。ファンネルアンプは、3つの機能(信号レベルシフト、シングルエンドから差動への変換、および単電源18ビットADCの入力要件を満たす減衰)を実行します。

 18ビットADCの後に、デジタルアイソレータがガルバニック絶縁を提供します。このスタイルの絶縁により、信号忠実度を干渉せずに双方間で異なるコモンモード電圧が可能になります。

回路の詳細

 これまでに説明したように、絶縁型マルチチャンネルDAQシステムには、マルチプレクサ、PGIA段、ADCアンプドライバ、および高精度の完全差動逐次比較レジスタ(SAR)ADCがあります。このシステムは、単一のADCを使用して8チャンネルを監視します。ただし、ADCドライバとADCは主なノイズの原因になります(図2)。


図2:18ビットADCを使用した絶縁型マルチチャンネルDAQシステムの回路図を示しています。ADCおよびADCドライバは主なノイズの原因になります。(画像提供:Analog Devices)

 ノイズレベルは、このアプリケーション回路に適合するコンポーネントのタイプを決定する仕様の1つです。

適切なコンポーネントの選択

 図2の入力マルチプレクサは、Analog DevicesのADG5207BCPZ-RL7という高電圧ラッチアップ耐性8チャンネル差動マルチプレクサで、3.5pFの超低静電容量、0.35pCの電荷注入をもちます。このように電荷注入が低いため、これらのスイッチは低グリッチレートおよび高速セトリング時間を必要とするサンプル&ホールドDAQ回路に最適です。

 ADG5207は、シングルエンド信号と差動入力信号の両方を受信するように構成できます。回路内に示されたコンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)は、そのアドレスピンを使用することにより、ADG5207のアクティブチャンネルを選択します。

 PGIAはAnalog DevicesのAD8251ARMZ-R7で、1、2、4、8の選択可能なゲインを提供します。その次の、Analog DevicesのAD8475ACPZ-R7というゲイン選択可能な完全差動ファンネルアンプは、グランドコモンモード電圧の2.048Vへのレベルシフト、および0.4/0.8のゲイン設定を提供します。

 AD8475の低出力ノイズスペクトル密度は、10nV/√Hzです。PGIAとファンネルアンプのゲインを組み合わせることにより、Analog DevicesのAD4003BCPZ-RL7 18ビットSAR ADCに適切なフルスケール入力信号を提供します(表1)。


表1:AD8251 PGIAの4つのゲイン設定に対応する入出力電圧範囲。PGIAとAD8475ファンネルアンプのゲインを組み合わせることにより、AD4003BCPZ-RL7 18ビットSAR ADCに適切なフルスケール入力信号を提供します。(表提供:Bonnie Baker)

 AD4003BCPZ-RL7は、完全差動、2MSPS、18ビットの高精度SAR ADCで、その信号対ノイズ比(SNR)は4.096Vリファレンスに対し98dBです。

システムノイズ解析

 ノイズは精度に大きな影響を及ぼすため、高速高精度のDAQを設計する場合は、ノイズを真剣に考慮する必要があります。ノイズは、周波数領域における現象で、ADCのデジタル出力のACおよびDC精度に影響を及ぼします。ノイズは無作為に発生するイベントです。

 ノイズのある回路が最初の変換で完全に正しい結果を出しながら、次の変換では非常に不正確な結果を出すことがあります。設計者にとって課題となるのは、回路内のすべてのデバイスからのノイズ要因をどの程度受け入れるかを判断することです。

 システム全体の2乗平均平方根(rms)ノイズは、AD4003 ADCの入力に換算される回路内のすべてのデバイスの2乗和平方根と等しく、式1を使用して計算されます。

            (式1)

 式の要素の意味は、次のとおりです。
          VnADG5207:ADG5207マルチプレクサrmsノイズ要因
          VnAD8251:AD8251 PGIA rmsノイズ要因
          VnAD8475:AD8475ファンネルアンプrmsノイズ要因
          VnAD4003:AD4003 18ビットADC rmsノイズ要因

 計算されたシステムrms SNRは、AD4003のフルスケール入力範囲またはVREFを使用し、式2を使用して計算されます。

            (式2)

 AD4003 ADCのノイズ:AD4003 ADCのノイズは、コンバータの量子化誤差および内部サーマルノイズの関数です。AD4003のrms入力電圧ノイズの計算は、フルスケール入力電圧(VREF)および動作SNRを使用します(式3)。

            (式3)

 4.096VのVREFを使用したAD4003のSNRのデータシートの仕様は、約98dBです。

AD8475ファンネルアンプのノイズ:AD8475のrms出力ノイズは、1kHzのアンプのスペクトルノイズ密度(AD8475)とアンプ回路の帯域幅制限を組み合わせたものです。ゲインが0.4V/VのAD8475帯域幅は、150MHzです。次の抵抗-コンデンサ(RC)フィルタの3dBのコーナー周波数は、6.63MHzです。AD8475と出力RCフィルタを組み合わせて、6.63MHzの帯域幅制限を作成します(式4)。

            (式4)

 式の要素の意味は、次のとおりです。
           εAD8475=10nV/√Hz
           R=200Ω
           C=120pF
           BWRC=1/(2xp×R×C)~6.63MHz

AD8251 PGIAのノイズ:AD8251のrmsノイズ要因は、その入力換算AD8251、nV/√Hz単位の1kHzスポットノイズ(εAD8251)、そのゲイン設定(GAD8251)、AD8475のゲイン(GAD8475)、およびAD4003の入力時のノイズフィルタ帯域幅(BWRC)の関数です。これは式5を使用して計算します。

            (式5)

 εAD8251の値は、40nV/√Hz(1V/Vのゲインの場合)および18nV/√Hz(8V/Vのゲインの場合)です。

ADG5207マルチプレクサのノイズ:Jonson-Nyquistノイズの式は、マルチプレクサのノイズスペクトル密度とその結果生じるrmsノイズを表します(式6)。

            (式6)

 式の要素の意味は、次のとおりです。
           kB(ボルツマン定数)=1.38×10^-23
           T:温度(ケルビン)
           RON:マルチプレクサ「オン」抵抗(ADG5207のデータシートより)

 マルチプレクサは直列抵抗のように動作するため、この数式(式6)の使用は適切です。マルチプレクサのスペクトル密度値(εnADG5207)は、式7を使用してADG5207 rmsノイズ要因を算出します。

            (式7)

ノイズ解析の要約

 図2の各コンポーネントにおいて計算されたノイズ要因の合計と、その結果もたらされるSNR(累積ゲインが3.2の場合)は、84.7dBです。ノイズの合計に最も大きな影響を及ぼすのは、AD8251 PGIAとAD4003 ADC(表2)です。

表2:マルチチャンネルDAQシステムの計算されたSNR性能(累積ゲインが3.2の場合)は、84.7dBです。(データ提供: Analog Devices)

回路の評価とテスト

 この回路の評価とテストを実行するために、設計者はEVAL-CN0385-FMCZ回路評価キットを使用できます(図3)。これには、図2の回路が含まれています。


図3:EVAL-CN0385-FMCZ評価ボードを使用して、この記事で説明したDAQフロントエンド設計を試すことができます。(画像提供:Analog Devices)

 CN-0385設計サポートパッケージには、完全な回路図とレイアウトサポート資料が含まれています。評価キットには、データキャプチャを促進するEVAL-SDP-CH1Zコントローラボードも含まれています(図4)。

図4:DAQフロントエンドを評価するためのテスト設定機能レイアウト。(画像提供:Analog Devices)

 EVAL-CN0385-FMCZボードの性能結果は、ノイズ計算と非常に近い値を示しています(表3)。

表3:累積ゲインが0.4、0.8、1.6、3.2である場合の10kHzフルスケール正弦波入力に対するEVAL-CN0385-FMCZボードのSNR、ノイズ、および全高調波歪み(THD)性能。(データ提供: Analog Devices)

 Audio PrecisionのSYS-2700で生成した信号を、差動入力モード設定で入力しました。10kHz入力信号の高速フーリエ変換(FFT)プロットを以下に示します(図5図6図7図8)。


図5:10kHz、20Vp-p入力のFFT。ゲイン=0.4、単一の静的チャンネルの場合。(画像提供:Analog Devices)


図6:10kHz、10Vp-p入力のFFT。ゲイン=0.8、単一の静的チャンネルの場合。(画像提供:Analog Devices)


図7:10kHz、5Vp-p入力のFFT。ゲイン=1.6、単一の静的チャンネルの場合。(画像提供:Analog Devices)


図8:10kHz、2.5Vp-p入力のFFT。ゲイン=3.2、単一の静的チャンネルの場合。(画像提供:Analog Devices)

 プロットが示すように、EVAL-CN0385-FMCZ評価ボード内部のADG5207、AD8251、AD8475、およびAD4003の信号チェーンの性能は、以前の計算と非常に近くなっています。

結論

 産業用およびプロセス制御環境では、温度・圧力・歪みに関する高精度のデータの収集を含む広範なデータ収集活動が行われています。このようなアプリケーションには、多重化された高精度チャンネルが必要です。同時に、周波数領域で低ノイズの高い精度を維持する必要があります。

 理想的なアナログ測定フロントエンドには、マルチプレクサ、PGIA、および18ビット2.0MSPSの高精度ADCがあります。ADCは、アクティブなマルチプレクサチャンネルから信号のサンプルを抽出します。この記事は、適切な回路のための正確な計算と補足的なテストデータを提供します。テスト結果は、EVAL-CN0385-FMCZ評価ボード内部のADG5207、AD8251、AD8475、およびAD4003の信号チェーンの実際の性能が、計算で得られた値と非常に近いことを示しています。


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