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動作異常のハードウェアから開発ツールを絶縁する方法

著者 Jacob Beningo 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-04-10
マルツ掲載日:2019-07-15


 テストやデバッグのために、開発ツールやラップトップなどのリソースを電子ハードウェアに接続する場合には、リスクがともないます。UART、SPI、I2Cなどのバスによる直接接続はシステムの動作の様子を監視するために必要ですが、開発中のハードウェアが故障する場合もよくあります。故障したハードウェアは、これらのインターフェースを通じて不測の電圧や電流を外部に与え、開発ツールやラップトップを破損する原因になります。

 ともすると開発ツールは値段が高く、その上、マーフィーの法則が示すようにハードウェアやツールは最悪のタイミングで故障します。その結果、プロジェクトは遅れ、ワークベンチを再び稼働状態に戻すために翌日配達便の余分な出費がかかります。

 この記事では、開発者が安価な絶縁ICに基づくインターフェース(製作時間は30分以内)を使用して、開発ツールへの投資を保護する方法を解説します。また、アイソレータの選択方法や、ハードウェアに不具合が生じたとき開発ツールやラップトップがその影響を受けないためのヒントとコツもいくつかご紹介します。

アイソレータを選択する際の考慮点

 アイソレータは、1つの回路を絶縁バリアによって2つに分割します。絶縁バリアの各側の回路は個別に給電、接地されます。この絶縁バリアは、高電圧とトランジェントを遮断するフィルタの役割を果たし、デジタル情報であるデータのみがカップリング機構を経由して片側から別の片側に送信されます。このカップリング機構は通常、容量性、磁気または光学式です。

 多くの場合、どのインターフェースを保護するにしても、複数の利用可能なオプションが考えられます。たとえば、I2Cアイソレータでよく使われるのは容量性タイプと磁気タイプです。どの技術を使うか選ぶ前に、作業する環境について理解する必要があります。

 容量性のカップリングは変化する電界を使用し絶縁バリアを通してデータを送信するので、強磁界があるアプリケーションに適した選択肢になります。容量性カップリングは比較的小さな基板フットプリントでエネルギー効率の高い動作になりやすく、これらの特徴によりこのタイプが多くのアプリケーションに適する選択肢になります。ただし重要な考慮点として、容量性カップリングには共有信号経路によるノイズの問題がともなう場合があります。

 磁気カップリングは変化する磁界を使用し絶縁バリアを通してデータを送信するので、強電界があるアプリケーションに適した選択肢になります。磁気カップリングは多くの場合に小さなトランスを使用し、それがノイズ除去と、絶縁バリアを通る非常に効率的なエネルギー伝送を可能にします。

 光学カップリングは光学パルスを使用し、非導電バリアを通して光を送信するので、ノイズの多い電界および磁界の環境に最適な選択肢になります。磁気的/容量的に結合された信号とは異なり、光学カップリングでは絶縁バリアを通して定常状態の信号を送信できます。光学カプラを使用する場合の短所は、速度が制限され、より多くの電力が動作に必要になることです。

 このような各種の技術とその特性を念頭に置きながら、次のステップではいくつかの異なるバスプロトコルを検証し、各種のインターフェース上で開発ツールを絶縁する方法について検討します。

I2Cアイソレータの選択

 マイクロコントローラの外部にあるデバイス用にドライバを開発する最適な方法は、何らかのバススパイツールを使用することです。このツールにより、開発者はバストラフィックを監視できます。高品質で高価なツールでは、バスにメッセージを注入することもできます。

 ここで短い経験談を1つ紹介します。かつて、I2C/SPIコンボツールを顧客のI2Cバスに接続して使っていたことがあります。顧客のハードウェアが故障しI2Cバス上に42Vの電圧が流れ、顧客のハードウェアは壊れて私の開発ツールも使えなくなりました。もしI2Cアイソレータを使って自分のツールを保護していたら、新しいツールを購入する余分な出費がなくなり、急行宅配便の支払いも不要になったはずです。

 I2Cアイソレータを選択する場合は、注目すべきいくつかの特性があります。まず、電圧絶縁は2500Vrms以上である必要があります。このレベルの絶縁は、組み込みシステム開発で起こる災難の90%以上を防ぎます。次に、アイソレータのデータレートを調べる必要があります。標準のI2Cは100kbpsおよび400kbpsで動作します。高速I2Cは1000kbpsで動作します。どのアイソレータやアイソレータ技術が最もふさわしい選択かは、ツールまたはアプリケーションにより決まります。

 開発ツールの保護に最適な機能を持つ汎用I2Cアイソレータには、数種類あります。汎用アイソレータであれば、Analog DevicesのADUM3211ARZ-RL7が適切なオプションです(図1)。


図1:ADUM3211は汎用の2チャンネル磁気結合アイソレータで、最大1000kbpsで動作します。(画像提供:Analog Devices)

 ADUM3211は磁気カップリングを使用し、最大1000kbpsのデータレートで絶縁バリアを通してデータを転送します。このため、このアイソレータは高速I2Cに対応しますが、双方向バリアは備えていません。したがって、開発ツールではバスを監視できますが、バスへの書き込みはできません。それでも多くのアプリケーションで特に問題ないでしょう。

 バス上でデータの監視と注入の両方を行う必要がある開発ツールを保護するには、Texas InstrumentsのISO1541DR I2Cアイソレータが最適な選択肢です(図2)。ISO1541はSOIC-8パッケージで容量性カップリングを使用し、双方向データを最大1000kbpsで送信します。このアイソレータには2つの個別の絶縁チャンネルが含まれており、1つはデータ信号用(SDA)、もう1つはクロック信号用(SCL)です。


図2:Texas InstrumentsのISO1541DR I2Cアイソレータには、最大1000kbpsで動作する2つの双方向絶縁チャンネルが含まれています。(画像提供:Texas Instruments)

 図1図2の両方からわかるように、これらのデバイスではツール側がアイソレータの同側に電力を提供し、ターゲット側が同側に電力を提供する必要があります。各電源からこれらに給電するのを忘れることが、絶縁バリア経由での通信がない状態が生じる、ありがちな理由です。このため、セットアップの際に必ず両方に給電するように注意する必要があります。

SPIアイソレータの選択

 SPIバスの場合、I2Cバスに比べてツールの保護に独特なコツがあります。I2Cバスに含まれる通信ライン数は、バス上に接続されるデバイスの数にかかわらず2つです。それに対して、SPIバスにはマスターアウト、マスターイン、クロックの3つのデータラインがあります。これら3つに加えて、SPIバスに接続されているどのデバイスにも、スレーブセレクトラインが必要です。また、どのSPIアイソレータにもスレーブセレクトライン用に複数の絶縁ラインが必要です。

 SPI開発ツールを保護するために最適な選択肢にはいくつかあります。最初の選択肢として、Analog DevicesのADUM3154 SPIアイソレータを取り上げます。ADUM3154は、磁気カップリングを使用し絶縁バリアを通して最大17Mbpsのデータレートでデータを送信します。この製品は4Mbpsの大半のマイクロコントローラSPIペリフェラルの最大ボーレートをカバーするだけでなく、メモリインターフェースコントローラに共通するデータレートもカバーします。またADUM3154は、最大4つの絶縁されたスレーブセレクトをサポートします(図3)。


図3:Analog Devicesの4チャンネルSPIアイソレータのADUM3154は、最大17Mbpsのデータレートに対応します。(画像提供:Analog Devices)

 17Mbpsの速度では不十分な場合のために、Analog DevicesはADUM3151BRSZ-RL7も提供しています(図4)。


図4:Analog Devicesの7チャンネルSPIアイソレータのADUM3151は、最大34Mbpsのデータレートに対応します。(画像提供:Analog Devices)

 ADUM3151も磁気カップリングを使用しますが、最大34Mbpsのデータレートに対応します。また、スレーブセレクトに使用できる4つのチャンネルを備えています。

シリアルワイヤデバッグ(SWD)アイソレータの選択

 組み込みソフトウェアのエンジニアが普通に使用している最も高価な開発ツールの1つに、デバッグプローブがあります。優れたデバッグプローブの価格は数千ドルにも及びます。プログラミングラインに何らかの支障が生じる可能性は低いですが、とは言え保護しないのは危険です。

 開発者は独自の絶縁ソリューションを開発してすべてのSWDラインを保護することもできますが、その作業には多少時間とコストがかかります。その代わりとなるシンプルなソリューションとして、SEGGER Microcontroller SystemsのJ-Link SWDアイソレータがあります(図5)。


図5:SEGGER Microcontroller SystemsのJ-Link SWDアイソレータは、デバッグプログラマとターゲットシステム間で1000Vの絶縁を可能にします。(画像提供:SEGGER Microcontroller Systems)

 J-Link SWDにより、エミュレータとターゲットハードウェア間で1000VDCの絶縁が可能になります。

UARTアイソレータの選択と作成

 多くの開発者が、小さなUARTの絶縁は時間とコストのムダだ、と考えるかも知れません。いずれにしても、SparkFun ElectronicsのBOB-12731 USB-シリアルブレイクアウトボードのような低コストなツールは、そのツールに何かあっても簡単に交換できます。しかし、何らかの不具合が起これば、保護が必要な側にあるコンピュータ装置の値段は数千ドルに及ぶ場合もあります。余分な時間と経費をかけてもそれを保護する価値はあります。

 UART保護回路の組み立てはシンプルで、同じような手順に従って他のバスインターフェースも保護できます。まず、アイソレータを選択する必要があります。前述のADUM3211は最適な選択肢です。というのも、それぞれ反対方向の2つの高速な絶縁チャンネルを備えているからです。これは多くの場合に隣同士で並んでいるUARTのTx/Rxラインに、完璧に適しています。

 アイソレータを選択したら、Aries ElectronicsのLCQT-SOIC8-8などのブレイクアウトボードを手に入れます(図6)。この基板にはあらかじめヘッダが含まれており、BOB-12731に簡単にはんだ付けできます。


図6:Aries ElectronicsのLCQT-SOIC8-8にはSOIC-8チップ用のブレイクアウトがあり、あらかじめ基板上にジャンパを備えているので目標のデバイスにすばやく接続できます。(画像提供: Aries Electronics)

 基板上とUARTアダプタにアイソレータをはんだ付けするとき、電圧とグランドのピンを正しく合わせる必要があります。そうしないと、アイソレータに電力が届きません。また、アイソレータチャンネルの方向を正しい向きにする必要もあります。ブレイクアウトボードまたはアイソレータを正しく合わせることができない場合には、基板のカスタマイズが必要になることがあります(図7)。


図7:組み立てられたUARTアイソレータ回路がUSB-UARTコンバータに接続されており、カスタマイズによりターゲットデバイスとの絶縁型通信を可能にします。(画像提供:Beningo Embedded Group)

 組み立てが完了すると、USB-UARTコンバータからアイソレータのツール側に電力が供給され、ターゲットデバイスからターゲット側に電力が供給されます。これにより絶縁された双方向UARTツールが、最大2500Vまで保護されます。

開発ツール絶縁のヒントとコツ

 開発ツールの保護には、さまざまな技法と絶縁インターフェースを使用できます。ここではツールへの投資を保護するためのヒントとコツをいくつかご紹介します。

・データシートを検証して、電圧絶縁仕様が自分のニーズに適合することを確認します。
・さまざまな絶縁機構について知り、アプリケーションに最適な技術を選ぶようにします。
・ラップトップのUSBに再接続するバスまたはインターフェースを絶縁します。これは、接地経路にダメージを与える危険性があるためです。
・選択したアイソレータに既存の開発キットを活用するか、またはブレイクアウトボードを使用して開発時間とコストを軽減します。
・SWDアイソレータを使用して、プロフェッショナルなデバッガを保護します。

結論

 多くの組み込みシステムの開発者は、高価な開発ツールをテスト中のハードウェアに接続することについて、あまり慎重に考えていません。通常は何も問題は起きないでしょう。しかし、開発ツールに仕様を超えた電圧や電流がかかってツールが破損するような不測の事態は突然起こります。

 土壇場になってワークベンチを稼働させるために慌てないように、すぐに利用できる多数の絶縁ソリューションを用いてツールを適切に絶縁するために数時間を費やすことが、効率的で経済的な開発プロセスの実現につながります。

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