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レゾルバを使用してモータの角度位置と速度を正確に測定する方法

著者 Bonnie Baker 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-05-23
マルツ掲載日:2019-08-19


 産業用モータ、サーボ、ロボティクス、車両用パワートレインなどの機械的システムの電子監視や電子制御は、効率性、信頼性、安全性を高めるために重要です。しかし、効果的な制御には正確な回転角度と回転速度の測定が必要となり、それは電気的ノイズが多く厳しい産業環境では容易ではありません。その解決のカギは、正確なレゾルバ-デジタル(R/D)コンバータとオペアンプによりサポートされるレゾルバにあります。

 この記事では、シャフトを正確に測定、制御する際の問題、ならびに多くのアプリケーションでレゾルバが優れたオプションとなる理由について概説します。さらに、レゾルバ、Analog DevicesのAD2S1210などのR/Dコンバータ、適切なドライバアンプ、フィルタ回路の組み合わせが、非常に正確でゆるぎない位置/速度の測定/制御システムをどのように生み出すかについて説明します。

レゾルバの構造

 レゾルバは、機械的な動きをアナログ電気信号に変換するエレクトロメカニカルデバイスです。基本的には回転トランスで、シャフトの角度位置に応じたAC電圧出力をともないます。レゾルバの2つの素子は、固定式ステータ内部で回転する1つの巻線のローターです。レゾルバの1次巻線はステータにあり、2次巻線はローターにあります(図1)。


図1:可変リラクタンス型レゾルバには、2つの入力端子(R1、R2)、2つの正弦波出力端子(S1、S3)、および2つの余弦波出力端子(S2、S4)があります。(画像提供:Analog Devices)

 大半のレゾルバ電圧は、50Hzから20kHzの周波数で2Vrmsから40Vrmsの間に指定されます。1次巻線と2次巻線の信号の振幅の比(変圧比)は、0.2V/Vから1V/Vです。一般的に、高性能レゾルバには高い入力電圧が必要で、これにより高出力範囲と高速なスルーレートの条件を満たすためにより高いパワーエレクトロニクスが必要になります。角度精度は5分から0.5分の範囲です(1度は角度単位の60分、1分は60秒)。
 図1では、ローター巻線のAC基準電圧励起(VR = E0 sin(ωt))はR1とR2の間になります。いずれかのステータ巻線での誘導電圧の大きさは、ローターコイル軸とステータコイル軸間で角度θの正弦波に比例します。ローターAC基準電圧E0 sinωtでは、ステータの端子出力電圧は次のようになります。

      R1-R2 = E0 sinωt                                                           (Eq. 1)
      S3-S1 = T×E0 sinωt×sin θ                                              (Eq. 2)
  S2-S4 = T×E0 sinωt×sin(θ+90°) = T×E0 sinωt×cosθ        (Eq. 3)
  
 2つのステータ出力信号は、正弦波と余弦波で変調されたシャフト角度です。90°と270°に最大振幅がある励起正弦波信号と、0°と180°に最大振幅がある正弦波と余弦波の出力信号のグラフを示します(図2)。


図2:レゾルバの電気入力信号(R1-R2)と出力信号。2つのステータ出力信号は、正弦波と余弦波で変調されたシャフト角度です。(画像提供:Analog Devices)

 完全な高性能R/D回路は、アビオニクス、自動車、および広範な温度で高い信頼性を必要とする重要な産業用アプリケーションで、角度位置と速度を正確に測定します(図3)。


図3:差動出力端子(EXC:/EXC)と差動正弦波および余弦波入力端子(SIN:SINLO、COS:COSLO)を備えた高性能R/D回路。なおEXCは図5のEXEと同じです。(画像提供:Analog Devices)

 図3では、R/D回路にはレゾルバロータードライバ回路があり、低電力と高性能の2つの動作モードを備えています。低電力状態にある場合、+6V単一電源システムは100mA未満の電流消費で動作します。システム全体は3.2Vrms(9.2Vp-p)をレゾルバに供給します。高性能状態にあるシステムは+12Vの単一電源で動作し、レゾルバに6.4Vrms(18Vp-p)を供給します。

 レゾルバローターへのR/D回路出力とR/D回路SIN/COS入力へのレゾルバステータ出力での3次アクティブフィルタは、システムの量子化ノイズの影響を最小限に抑えます。 R/D回路の最大トラッキングレートは10ビットモードで3125回転/秒(RPS)で、分解能は21分に相当します。16ビットモードでは、R/D回路の最大トラッキングレートは156.25RPSで、19.8秒の分解能が得られます。

信号チェーン設計の考慮事項

 Analog DevicesのAD2S1210WDSTZRL7 R/D回路は、プログラム可能な10、12、14、16ビットのD/Aコンバータ(DAC)と10、12、14、16ビットのA/Dコンバータ(ADC)、2つの3次ローパスフィルタ、およびレゾルバを備えています。

 3次フィルタの1つは、R1とR2のレゾルバローター端子へのR/Dコンバータ出力にあります。もう1つの3次ローパスフィルタは、S1とS3での正弦波レゾルバステータ信号と、S2とS4での余弦波信号を収集します。

 一般的にシステムには、広範な帯域幅、十分な出力駆動能力、そして低消費電力と高性能の構成を切り替えるオプションが必要です。

 この回路では、R/D回路の内部DACが3.2~4.0Vの範囲で3.6Vp-pの10、12、14、16ビット正弦波励起信号を生成します。

 AD2S1210の出力には、Analog DevicesのAD8692ARMZレールツーレールオペアンプとAnalog DevicesのAD8397ARDZレールツーレール高出力電流アンプで構成されるローパス3次フィルタがあります。

 +5V電源で、デュアルAD8692低ノイズCMOSオペアンプの出力範囲は0.29~4.6Vです。このアンプの周囲にある抵抗器とコンデンサは、バターワースフィルタの3ポールのうち2つを実装します。AD8397の高出力電流アンプは、高性能モードに対して低電力モードの実装に対応し、ローパスフィルタの3番目のポールとともに、切り替え可能なゲイン段と高電源電圧に対応する機能を備えます。AD8397への+6V電源では、出力範囲は0.18~5.87Vです。+12Vの電源電圧では、出力電圧範囲は0.35~11.7Vです。

 ステータの出力側では、Analog DevicesのクワッドAD8694ARUZ低ノイズCMOSレールツーレールオペアンプがレゾルバのSIN(S1およびS3)およびCOS(S2およびS4)ピンに接続されます。デュアルAD8692と同じファミリのAD8694は、+5V電源で出力電圧範囲が0.37~4.6Vです。AD2S1210 R/Dコンバータの差動入力(SIN、SOLO、COS、COSLO)には、レゾルバの標準3.15Vを中心に2.3~4.0Vの範囲の正弦波信号と余弦波信号のピークツーピーク信号範囲があります。

 理想的には、このシステムでは、全信号チェーン位相シフト範囲はn×180°- 44°≦ φ≦n×180°+ 44°に等しくなります(nは整数)。

R/D回路の詳細

 信号チェーン設計の考慮事項には、振幅と周波数とともに安定性と位相シフトが含まれる一方、レゾルバのローター巻線インピーダンスモデルには抵抗素子と誘導性素子が含まれます。

 AD2S1210 R/D回路の励起信号範囲は2kHz~20kHzで、250Hz刻みです。AD8397からローターに印加される励起信号は、理想的ではないインダクタと抵抗成分とインターフェースします。標準的な抵抗とリアクタンス成分は、50Ω~200Ωおよび0Ω~200Ωです。標準的なローター励起電圧は20Vp-p(7.1Vrms)に及ぶため、レゾルバドライバの最大電流と最大消費電力を考慮することが不可欠です。

 このインターフェースに対応するため、AD8397には高出力電流(±12V電源で32Ωに最大310mA)、広範な電源範囲(24V)、低熱抵抗パッケージ(8ピンSOIC EP、SOIC EP、θJA = 47.2℃/W)、レールツーレール出力電圧を備えています。

レゾルバの励起3次フィルタ回路およびドライバ回路

 AD2S1210の内部DACは励起出力信号(EXC)を生成し、これが量子化ノイズと歪みを発生します(図4)。


図4:AD2S1210 EXC励起出力ピンで測定された10kHz出力信号。(画像提供:Analog Devices)

 フィルタ処理されないと、図4のAD2S1210のEXCピンの出力ノイズがレゾルバを通って伝播し、AD2S1210のSIN、SINLO、COS、COSLOの各ピンにフィードバックされます。また、AD8397の出力ドライバが飽和しないように、励起回路のゲインレベルと信号レベルには十分注意する必要があります。AD2S1210の出力信号のフィルタとパワーアンプ段は、レゾルバの誘導入力段の厳しい要件に対応します(図5)。


図5:R/D回路のEXC出力端子とR1入力端子間の励起ドライバとフィルタ回路。なお、EXEは図3のEXCと同じです。(画像提供:Analog Devices)

 図4では、AD8692フィルタ回路のDCゲインは-1V/Vです。Analog DevicesのADG1612BRUZクワッドSPSTスイッチS1が閉じて、高VCC(+12V以上)により高性能モード状態が生じます。S1が閉じた状態では、AD8397ドライバ段のゲインは約2.5V/Vになります。2.5V/Vのゲインは、4.0Vp-p EXE入力からの10Vp-p出力を生じます。S1が開いた状態の低電力モードでは、ゲインは1.28V/Vになります。 この構成では、4.0Vp-p EXE入力により5.12Vp-p出力が生じます。

 AD8692の構成は、多重帰還(MFB)3次バターワースローパスフィルタです。一般的な経験則として、アンプのゲイン帯域幅積(GBWP)は-3dBアクティブフィルタの遮断周波数の少なくとも20倍です。図5では遮断周波数は88kHz、またAD8692のGBWPは10MHzで、これは遮断周波数の113倍です。通常は、この回路の位相シフトは180°±15°になります。図4の回路では、フィルタの-3dB遮断周波数は88kHzで、位相シフトは10kHzで-13°です。

 デュアルAD8692オペアンプは3次アクティブバターワースフィルタとして機能し、ドライブ信号ノイズを低減します。図6のデータは、AD2S1210の内部DAC量子化ノイズの大幅な減少を示しています。


図6:R/Dコンバータの出力信号が励起ドライバとフィルタを通過した後、信号に付帯するノイズは大幅に減少し、R1でのレゾルバ入力が可能な状態です。(画像提供:Analog Devices)

 同様に、SIN(S1とS3)およびCOS(S2とS4)レシーバ回路は、2つのクワッドAD8694オペアンプをアクティブノイズフィルタとして使用します。AD2S1210のEXCピン(CH1黄色)からSIN入力ピン(CH2青)までの位相シフトの合計は約40°で、これは最大設計値の44°未満です(図7)。


図7:アナログドライバとフィルタからレゾルバ入力に入り、レゾルバ、アナログフィルタを通してR/Dコンバータに戻る過程で発生する信号位相シフトがあります。オシロスコープのスクリーンキャプチャは、AD2S1210のEXCピンとSINピン間の位相シフトを示しています。(画像提供:Analog Devices)

システム性能

 この記事の評価回路では、Analog DevicesのEVAL-CN0276-SDPZ回路基板とAnalog DevicesのEVAL-SDP-CB1Zシステムプラットフォームコントローラ基板を使用しています(図8)。


図8図4図6図7図10図11に対応するテストセットアップの機能図。(画像提供:Analog Devices)

 図8に示す2つの基板間の120ピン嵌合コネクタにより、迅速なセットアップと回路の性能評価が可能になります。

 EVAL-CN0276-SDPZには完全な回路が含まれており、EVAL-SDP-CB1Z(SDP-B)はCN-0276評価ソフトウェアと連携しEVAL-CN0276-SDPZからのデータを交換します(図9)。


図9:EVAL-CN0276-SDPZプリント基板にはR/Dコンバータ用の完全な回路が含まれます。(画像提供:Analog Devices)

 システム全体のノイズ測定では、多摩川精機のTS2620N21E11レゾルバに固定位置を適用し、出力コードヒストグラムを生成します。AD2S1210の10ビットおよび16ビット角度精度モードのコード出力ヒストグラムには、送信DACと受信ADCの組み合わせが表示されます(図10図11)。

 この記事では、TS2620N21E11レゾルバの位相シフトは0°で、変換率は0.5です。レゾルバの正弦波(SIN)および余弦波(COS)の出力負荷は等しく、少なくともレゾルバの出力インピーダンスの20倍以上です。


図10:EXEは10ビット角度精度モードで送信し、SIN/COSは16ビットADC分解能で受信します。(画像提供:Analog Devices)


図11:EXCは16ビット角度精度モードで送信し、SIN/COSは16ビットADC分解能で受信します。(画像提供:Analog Devices)

 図10図11では、VCCは12Vに相当し、R/Dコンバータの全16ビットが高性能モードになります。

結論

 レゾルバとAnalog DevicesのAD2S1210などのR/Dコンバータの組み合わせにより、潜在的に過酷な環境でのモータ制御アプリケーションに対応する、高精度で堅牢な位置および速度制御システムが生まれます。

 総合的に最高の性能を引き出すために、AD8694とAD8397を組み合わせてバッファ/フィルタ回路を形成し、これらの回路により励起信号を増幅してレゾルバへの適切なドライブを実現し、2次信号のフィルタリングとフィードバックを可能にします。可変分解能、リファレンス信号生成、およびオンチップ診断を備えるAD2S1210 R/Dコンバータは、レゾルバアプリケーションの理想的なソリューションを提供します。



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