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産業用アプリケーションに適したケーブル設計を成功に導く選択と使用方法

Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-02-28
マルツ掲載日:2019-06-10

 IIoT(産業用モノのインターネット)は、産業用機械同士、工場の生産現場同士、クラウド間などでデータ、コマンド、電力を伝送し合うケーブルに大きく依存します。しかし、商業施設での接続には物理的・環境的・電気的な危険因子が多く伴うため、ケーブルの選択とルーティングに細心の注意を払う必要があります。多くの場合設計者は、性能とコストのどちらを優先させるかという複雑な問題に対処する必要があります。

 この記事では、産業環境とIIoTがもたらすケーブル配線におけるさまざまな課題について見直し、商用オフザシェルフ(COTS)のソリューションと産業用ケーブル配線ソリューションとの違いについて考察します。次に、適切なケーブルを指定することによってどれだけ性能が向上し、総所有コスト(TCO)を抑えることができるかについて説明しますが、これはIIoTプランニングにおける主な判断基準です。

 ここで2つのアプリケーション例について考察してみましょう。一つは産業用モータに使用する可変周波数ドライバ(VFD)、もう一つは産業用Ethernetネットワーキングです。これらは工場で使用されるケーブルのそれぞれ異なる側面(高電力な動作、高速なデータネットワーキング)について説明する適例となるため、今回の考察対象として選ばれました。

産業環境はケーブルにとって過酷です

 産業的施設には製造工場、石油とガスの処理プラント、炭鉱、下水処理施設、トンネルや地下鉄などの交通システムが含まれます。これらの環境はケーブルにとって過酷です。化学物質、紫外線(UV)の光、湿気の侵入、衝撃、極端な温度変化、振動などの危険因子があるためです(図1)。また、ケーブルに対して信号の完全性を確実にし、信号損失と電磁干渉(EMI)による影響を最小限に抑える必要もあります。


図1: 産業用グレードのケーブルは多くの工業的危険因子に直面するため、信号の完全性を維持する必要があります。(画像提供:Belden)

 故障は操作者の安全性を損ない、品質的な問題を引き起こし、コストを増大させます。生産ロスが生じるたびに莫大な損失が生じます。

 工場に配線されるケーブルの機械的危険因子には、衝突、摩擦、衝撃、緊張、振動などがあります。また、多くの産業用アプリケーションは連続的に動いています。多軸式の工作機械、ロボット、風力タービン、ピックアンドプレース機、自動ハンドリングシステム、コンベヤシステムなどはその一部の例です。これらのアプリケーションに使用されるケーブルは、何百回、何千回ものサイクルで繰り返される屈曲に耐える強度が必要です。

 侵入的危険因子には湿気、化学物質、埃などがあります。多くの産業では刺激の強い化学物質が使われているため、ケーブルは性能を損なうことなく長期的な暴露に耐える必要があります。たとえば、食料品と飲料の加工において、機器は厳しい衛生要件に応じるため、高圧の水や腐食性の高い化学物質による洗浄を定期的に行わなければなりません。設計の不十分なケーブルでは、液体が導体に入り込む可能性があるからです。

 産業用ケーブルの配線は屋内・屋外への設置のいずれにおいても、このような危険因子に多くさらされます。その結果として生じる危険性には極度の高温と低温、紫外線の放射(日光)、湿気、ネズミなどにかじられる被害、侵入性を持つ木の根などがあります。

 産業用の電気的環境には強い電流、高電圧、不十分な接地のほか、アーク溶接機、加熱炉、暖房換気空調(HVAC)設備などからの電磁干渉などが存在します。工場でのアップグレードでは、空間的制約により、新しいケーブルがモータやジェネレータなどのノイズ源に近づけてルーティングされてしまうことがあります。

 上に述べたような環境におけるこれらの産業的危険因子と、一般的な商業環境における危険因子を比較してみましょう。オフィススペース、サーバ室、居住部分などを含む商業施設は一般的に暖房換気空調システムで温度と湿度が調節され、ケーブルの温度と湿度のレベルが一定になるよう配慮されています。インフラストラクチャにおけるケーブル配線の多くは、天井の上のエアスペース(プレナム)か、長年手つかずの状態で放置されがちな壁の内部に通されます。標準的な商業環境では微細粒子や液体がほとんど入り込まず、極端な温度変化も生じないため、商用ケーブルは埃、湿気、化学物質、極度の温度、紫外線の放射などにさらされることがありません。

 商用オフザシェルフ(COTS)のケーブルは使用条件に合わせて設計されるため、商用ケーブルを産業用アプリケーションに使用すると故障率が上昇したり、生産損失が生じたり、コストが増大したり、安全性が損なわれたりする場合があります。一連の標準テストで2種類のケーブルを比較することで、産業用グレード製品のすぐれた性能が明らかになっています(図2)。


図2: 同一のテストを行った場合、産業用グレードのケーブルがより優れた性能を示します。(画像提供:Belden)

ケーブルの内部構造

 図3に示すように、ケーブルは全体的な性能に影響を及ぼすいくつかの主なコンポーネントから成り立っています。内容は以下の通りです。

 ・ケーブル導体
 ・ケーブルおよびケーブル被覆用の絶縁
 ・EMIシールド

図3: 一連の DataTuff産業用Cat 5e Ethernetケーブルは、信頼性と性能を向上させる設計面での改善の一部を示しています。(画像提供:Belden)

 一般に、ケーブルの端から端まで電力または電気信号の伝送に使用されるワイヤは、ソリッドワイヤとより線の2種類があります。それぞれに異なる特性があります。

ソリッドワイヤ:その名前が示す通り、ソリッドケーブル内の伝導経路は単線で、多くの場合は銅製です。一般に、ソリッドケーブルはより線ケーブルよりも安価で、同等な電流の場合直径が小さくなります。抵抗が低く優れた電気的性能を備えていますが、柔軟性に欠けるため、ソリッドケーブルはロボティクスなどの移動機械への使用には適していません。

より線:ケーブルの場合、さまざまなフィラメントをより合わせて導線が作られ、大きく太いワイヤを形成しています。振動が課題となるか、頻繁に屈曲したり曲げたりしなければならない用途の場合、より線ケーブルの柔軟性が優位性をもたらします。

導体とケーブル被覆用の絶縁

 導体のコーティングに使用されるプラスチック材には、絶縁体だけでなく誘電体としての役目もあります。その比誘電率と誘電正接が信号の伝送に影響します(図4)。特に、比誘電率はケーブルが電気エネルギーを格納する能力を測定する基準となります。エネルギーが絶縁を通り抜ける速度の関数です。誘電正接はエネルギーが誘電体へ向かって消失する(誘導体に吸い込まれる)割合を測る基準となります。これらのいずれかのパラメーターの値を減少させることが信号伝送性能の改善につながります。


図4: 一般的なケーブル絶縁材の特性の比較。比誘電率と誘電正接の値を下げることが信号伝送性能の改善につながります。(画像提供: Texas Instruments)

 多くの産業用ケーブルでは、電気ノイズを抑えて干渉から保護するため、導体がシールドで覆われています。編組構成したシールドとホイルによるシールドの2種類が一般的です。ホイルによるシールドでは100%の被覆率を実現できますが、終端しにくく抵抗値が比較的高いため、グランド経路が不十分になりがちです。編組構成した銅シールドでは60%~85%のシールド被覆率しか実現できませんが、質量を増やすほど導電率が向上し、グランドとの接続状態が改善され終端が容易になります。

 電磁干渉(EMI)が強い環境では、ホイルと編組による混合シールドにより、保護レベルを可能な限り高めることができます。たとえば Alpha Wireでは、アルミ/ポリエステル/アルミホイルの3層からなるシールドを施したケーブルと、編組構成した錫メッキ銅シールドを施したケーブルの両方を提供しています(図5)。


図5:ホイルによるシールド(下)、銅編組によるシールド(中)、アルミ/ポリエステル/アルミホイルによるシールドに編組構成した錫メッキ銅シールドを加えたもの(上、性能が向上)。(画像提供:Alpha Wire)

 ケーブル被覆は、ケーブルの実装後の使用可能期間にわたって、機械、湿気、化学物質などによる損傷から内部の導体を保護します。また、この被覆により耐炎性が向上し、紫外線の放射から保護できるほか、実装も容易になります。

 ケーブル被覆の装甲により、ワイヤとシールドを粉砕から保護します。その構造にはアルミによるインターロック装甲や亜鉛メッキ鋼線による被覆などの技術が使用されています。また、装甲被覆ケーブルにはPVCや同様の材料で金属部の周囲に被覆を施したものもあり、ケーブルと装甲を腐食性蒸気および湿気から遮断できます。

 標準的なケーブルのオプションにはアルミまたは鋼材によるインターロック装甲、埋没型あるいは屋外型の使用に適したケーブル、耐ガソリン性、高い柔軟性、高温および低温での運用などがあります。

 多くのメーカーは高性能なケーブルに自社独自の機能を組み込んでいます。たとえばBeldenのDataTuff Cat 5e産業用Ethernetケーブルでは特許取得済みのBonded-Pair構造を採用し、導体ペアから隙間をなくして常に信頼性の高い電気的性能を発揮できるようにしています。

アプリケーション例:Ethernetネットワーキング

 Ethernetは工場の生産現場で長年にわたり使用されてきましたが、最近では、安全性が設計上の主な考慮事項である(600Vを超える)高電圧機器の制御用途にもその使用範囲が広がっています。高電圧送電を行うわけではないものの、このような用途を前提とした制御ケーブルもまた米国電気工事基準(National Electrical Code(NEC))の要件の対象となるため、600V対応のEthernetケーブルの有効性が増大しています。

 MolexのFlamarシリーズのケーブルがその適例です。これらのケーブルは産業用オートメーション向けに設計されていて、600Vに対応できる性能が特長です。一般的な制御用途、サーボモータ制御、ネットワーキング向けにいくつかのバージョンで提供されています。これらのケーブルは溶接スラグ耐性と耐油性があり、食品衛生のEcolab規格への準拠のほか、UL(Underwriters Laboratories)のOil Resistance II Compliance規格にも適合しています。

 電気通信関連のケーブルには産業施設を対象とする独自の環境規格(ANSI/TIA-1005-A)があります。この規格では機械、侵入、気候や化学物質、電磁波(MICE)などへの耐性を4つのレベルの環境等級に分けて定義しています。その等級1~2または3は、カテゴリごとに厳格に定格が設定されています。一般に商業ビルの環境等級はM1I1C1E1であり、その規格の中でも最も厳格な環境等級はM3I3C3E3です。

 名目的にトップレベルの要件(Cat 5e Ethernetなど)を満たしているケーブルを選択する場合、設計者はケーブル仕様を注意深く比較する必要があります。トップレベルのアプリケーション要件を満たしているように見える複数のケーブルが異なる価格帯で存在しているようですが、さらに詳しく調べてみると仕様の違いが明らかになります。

 たとえば、Beldenの 7928と7939は、いずれも8導体のDataTuffケーブルであり、産業用Cat 5eでの運用を前提とした定格となっていますが、その推奨アプリケーションには違いがあります。なぜなら、構造のわずかな差異により7928の性能のほうが7939よりも優れていますが、その分製造にかかるコストも増大します(表1)。


表1:Beldenの7939と7928はいずれも8導体のCat 5e DataTuffケーブルですが、構造のわずかな差異により7928の性能のほうがやや優れています。(データ提供:Belden)

 7939のPVC絶縁に対し、7928のFEP絶縁ではより高い温度での動作が可能になります。7928のケーブルは固体銅導体であるため、7939のより線導体と比較すると1フィートあたりの直流抵抗(DCR)が優れており、1フィートあたりの最大静電容量を大幅に下げることができます。これらの電気的な違いにより、7928では低遅延性が得られ、伝播速度がより高くなります。

 高周波における性能仕様では、そのすべてが総合的に作用します。7939ケーブルの動作仕様が最大100MHzとなっているのに対し、7928ケーブルでは最大350MHzとなっています。また、7928は低周波においても優れた性能を発揮します。

 性能の違いは明らかですが、コストにも差ができます。いずれも特定の用途の基本的な仕様に適合しているかもしれませんが、品質が高いバージョンのほうが性能面で得られるメリットが多く、動作の信頼性も高まるのです。

アプリケーション例:VFDケーブル

 モータは電気エネルギーを機械的な動きへ変換できるため、数十年にわたって生産工程の主なコンポーネントであり続けてきました。モータのタイプには、ブラシ付き/ブラシレス直流電流(DC)設計、交流電流(AC)設計、ステッピングモータなどがありますが、いずれも独自の性能特性およびドライバ特性を備えています。

VFDパルス列の特性

 VFDはパルス幅変調(PWM)により、ACモータを正確な速度とトルクの制御を行います。VFDは製造工程で幅広く使用されていますが、切り替える駆動信号の特性により、性能が最も優れ動作寿命の長い適切なケーブルを選択することが非常に重要です。その特性には以下のようなものがあります。

定常波:VFDケーブルのインピーダンスは約85~120Ωです。VFDモータのインピーダンスはこれより高く、一般には数百Ωに達します。PWMパルス列がモータの高いインピーダンスと一致すると、大量のエネルギーが反射されます。この定常波がケーブルの電圧を2~3倍にまで上昇させるため、絶縁が劣化して故障の原因となる場合があります。

コロナ放電:強い電場に導体が取り囲まれると、間にある大気がイオン化され、これがエネルギー放出の原因となります。コロナ放電によりケーブル絶縁材が劣化し、シールドが損傷します。また、ドライバのエレクトロニクスが損傷したり、電力が浪費されたり、場合によっては熱の発生により絶縁が溶けたりすることもあります。

高調波歪み:あらゆる信号には、その動作周波数で生じるエネルギーがあり、この整数倍の周波数(高調波)で発生したエネルギーが加わると波形の歪みが生じます。高い高調波で生じるエネルギーはケーブル内のジュール損失を増大させ、過熱の原因になります。

突入電流:モータには始動時、非常に高い電流が流れます。ほとんどのVFDコントローラでは、モータ速度をゆっくり上げて行くことで最大始動電流に制限をかけますが、それでもケーブルが初期サージに対応できるように設計することが必要です。

EMI:デジタルパルスの高速スイッチングは電磁干渉(EMI)を生じさせます。このエネルギーが他の回路に伝送されると、信号の劣化や誤りなどの問題が生じる可能性があります。

 VFDケーブルを選択する場合、将来的に増設するための余裕を持たせるためにも、全体的な駆動系と必要な電流容量について理解しておくことが非常に重要です。高性能なVFDケーブルは建設用グレードのケーブルよりもグランドとシールドの性能が優れており、高い信頼性および安定した接続を実現できます。ここで、改善されたVFDの性能についてのヒントと主な推奨事項についてご紹介しましょう。

 接地系は、可能な限り接地経路インピーダンスを低く抑えた設計でなければなりません。接地経路に通常よりも多く銅が使用されているケーブル(「300%接地設計」と呼びます)では損傷を及ぼす恐れのあるコモンモード電流(CMC)を確実に封じ込め、悪影響を及ぼすことなくドライバに戻せるようにします。

 腐食を防ぐため、高周波用に錫メッキ銅で設計され、ストランド数が高く表面積が広い導体を選択しましょう。

 静電容量が低く絶縁耐力が高いケーブルを選択しましょう。高熱でナイロンコーティングしたサーモプラスチック(THHN)を使用した建設用グレードのVFDケーブルは、給電損失が生じやすく、反射された波形電圧の上昇が早まります。このようなケーブルには、架橋ポリエチレン(XLP)などのハイグレードな熱硬化性絶縁を施した導体の1/3程度の絶縁強度しかありません。 また、XLPはTHHNよりも優れたコロナ放電への耐性を発揮します。

 シールド材はノイズ性能に大きく影響します。シールドのインピーダンスが低ければ電流の反射も生じにくく、システムの信頼性が向上します。逆に、シールドを施していないケーブルはアンテナとして作用してしまい、放射妨害波の発生源となることがあります。高周波での性能を最大化するには、シールドの表面積を可能な限り広げる必要があります。先に述べたように、銅箔両面テープまたは銅編組はシールド性能を最大化できます。

 Alpha Wireの V-Flexケーブル はロボット、コンベヤなどの反復的あるいは連続的な動きをする高性能なVFDアプリケーションに最適な設計です。このファミリには7種類のケーブル設計、錫メッキ銅より線の導体(4AWG~16AWG)、TPE被覆、ルーティングと処理を行いやすくする柔軟性の強化など、さまざまな特長があります。たとえば、VF16006 BK005ケーブルは6AWGワイヤおよびホイル/編組を使用した4導体ケーブルです(図6)。


図6:Alpha WireのVF16006 BK005ケーブルはVFDアプリケーション用に設計されています。導体1つあたり最大52Aまで対応でき、ホイル/編組によるシールドを使用しています。(画像提供:Alpha Wire)

 このケーブルは耐油性および紫外線抵抗性があり、-40℃~+90&℃の動作温度を持ち、導体1つあたり最大52Aの全負荷電流によってドライブを最大50馬力(HP)で処理できます。

結論

 通常、ある特定のアプリケーションに対し、設計者は一見いずれもトップレベルの要件を満たしているように見え、価格帯が異なる複数のケーブルから1つを選択します。しかし、商業と産業の動作環境は大きく異なります。この記事では、商用ケーブルと産業用ケーブルの構造的な違いについて見直し、2つの一般的な産業用アプリケーションのケーブル配線要件について詳しく調べました。

 これまで示したように、産業ケーブルには商用ケーブルに対してわずかな、あるいはそれほどわずかではない改善点があり、これは工場の生産現場での使用可能期間にわたって採算が合う以上の利点をもたらします。


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