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発振器の選択と効率的に適用する方法 

著者 Art Pini 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-02-12
マルツ掲載日:2019-05-27

 同期デジタルシステムの登場により、目立たなかった発振器が、最新のマイクロプロセッサベースのデジタルシステムに欠かせないものとなりました。その数千もの用途に合わせ、非常に多くの発振源と、多種多様な共振器構造を使用する構成が発展してきました。しかし、発振器の選択については、多様な共振器、多くの内蔵アンプ、温度安定化スキームの違いから、使い方を十分に理解せずに簡単に決めてしまうことがよくあります。これらはすべて、デバイスのサイズや精度、安定性、コストだけでなく、設計への適用方法にも影響します。

 この記事を参照すると、設計者は発振器の動作と構造に加え、その重要な仕様や設計要件への対応について理解を深めることができます。出力波形、周波数の精度と安定性、位相ノイズ、ジッタ、負荷と温度差、コストについて調べ、適切な設計にするための発振器の最適な適用方法についても説明していきます。

発振器の基本

 発振器は、目的の周波数で周期的な波形を発生させる電気回路です。汎用発振器の機能ブロック図には、アンプや周波数選択フィードバックネットワークを使用するフィードバックパスが含まれています(図1)。目的とする発振周波数でループゲインがユニティゲイン以上の場合に発振を開始および維持でき、同時にループに関する位相シフトは2Pラジアンの倍数と等しくなります。これは正のフィードバック条件です。

 周波数依存のネットワークにはLCネットワークやRCネットワークを使用できますが、高精度の発振器では共振器を使用するのが一般的です。共振器タイプにはそれぞれ独自の利点と弱点があるため、どのような共振器を選択するかは、扱わなければならない仕様の1つになっています。



図1:正のフィードバック構成でアンプと周波数選択ネットワークまたは共振器で構成される基本の発振器の機能図。(画像提供:Digi-Key Electronics)

 一般的に使用される共振器は、水晶振動子、表面弾性波(SAW)フィルタ、またはマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)です。このような発振器は、最初に電源投入するときに回路の信号のみがノイズになります。発振のゲインと位相状態に対応する周波数でのノイズの要素は回路ループを循環し、回路の正のフィードバックによって振幅が増加していきます。信号の振幅は、アンプの特性や外部の自動ゲイン制御(AGC)ユニットによって制限されるまで増えていきます。

 発振器出力の波形はこの時点で制御することができ、一般的な波形として正弦波、クリップ正弦波、論理(「0」または「1」)出力を選択できます。論理出力を選択した場合、論理ファミリ(HCMOS、TTL、ECL、LVDSなど)も選択する必要があります。

 正弦波出力は、主にスペクトル純度が重要な通信関連用途で、キャリアやローカル発振器の信号発生に使用されます。正弦波波形では基本周波数でのみ大きな電力が発生し、調和周波数ではほとんど電力が発生しません。

 発振器の主要な仕様は、どの程度その周波数を維持できるかを定義する周波数安定性です。関連する仕様は、長期(通常は1年)にわたる発振器の周波数のずれを指定する経時変化です。用途の速度が加速すると、発振器の位相の短期変動が重要な問題になってきます。位相のこの短期変動は、発振器の位相ノイズとして表されます。位相ノイズは、周波数領域仕様です。同等の時間領域仕様は、位相ジッタまたは時間間隔誤差です。

共振器

 基本発振器におけるフィードバックネットワークは、いくつかある共振構造のいずれかになります。最も一般的な構造は、水晶振動子です。水晶振動子共振器では、圧電効果が使用されます。水晶全体に印加される小さい電圧で水晶が変形し、水晶に加えられる力によって電荷が生じます。この一連のエレクトロメカニカルなやりとりによって、非常に安定した発振器の基礎が形成されます。この結果、水晶のタイプや水晶がカットされる幾何学的方向とその寸法に関連して、特定の周波数で発振が生じます。

 水晶は、水晶共振器の入力と出力を形成する2つの電極間で保持されます。これらの条件下で、水晶は非常に選択的なLC回路のように動作します(図2)。ホルダ内の水晶振動子は、直列RLC回路で表されています。この回路は、モデル成分のLSとCSが支配的な直列共振周波数を表します。並列に接続されているコンデンサは、ホルダおよび関連の配線の静電容量を表します。並列静電容量CPは、直列インダクタンスLSに反応し、並列共振周波数が生じます。動作中、直列共振は共振器の動作の中心となります。水晶基本周波数の範囲はkHzから約200MHzまでです。


図2:水晶振動子の等価回路モデルのモデル成分LSとCSによって直列共振周波数が決定し、 LS、CS、CPで並列共振が決定します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

 もう1つの一般的な共振器は、表面弾性波(SAW)デバイスです(図3)。



図3:SAWフィルタ/共振器では、圧電基板に取り付けられたインターデジタルトランスデューサを使用して、トランスデューサ間のギャップに表面弾性波を生成し、出力で周波数依存の応答を生成します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

 SAWフィルタは、弾性基板の表面に沿って伝播される表面弾性波を使用する周波数選択デバイスです。SAWは、図に示されているように基板上の導電性パスで形成されるインターデジタルトランスデューサ(IDT)を使用して生成および検出されます。SAWフィルタ/共振器は、10MHz~2GHzの周波数範囲で動作します。周波数は、IDT要素の大きさと基板素材の特性によって異なります。SAWデバイスの回路モデルは、水晶振動子のモデルと似ています。SAW共振器は、小さなパッケージにフォトリソグラフィを使用して低コストで製造することができます。これらの発振器はSAW発振器またはSOと呼ばれます。

 この記事で説明する最後の共振器は、MEMSに基づきます。MEMSでは、標準の半導体製造プロセスを使用して小型の機械要素を作成します。これらのデバイスのサイズは、ミクロンからミリメートルまでさまざまです。高周波音叉と同種の共振器は、静電的励起で振動するように設計されています。これらの共振器のダイ構造は、プログラム可能な発振器/コントローラICと結合されます(図4)。

図4:MEMS発振器モジュールでは、単一パッケージにMEMS機械構造と発振器/コントローラICが結合されています。(画像提供:SiTime)

 発振器/ドライバはMEMS構造を励起し、MEMSデバイスの出力周波数にプログラム可能な係数「N」を掛け合わせるフラクショナルN位相ロックループ(PLL)にその出力を送ります。One-Time Programmable(OTP)メモリには、モジュール設定パラメータが格納されます。温度補償は、PLL内の出力周波数を調整して実現されます。PLLをプログラムして、発振器にデジタル制御の周波数出力を与えることもできます。

 MEMS発振器の最大のメリットは、機械の衝撃と振動に対する耐性です。これは、携帯電話、カメラ、時計などのモバイルアプリケーションでは重要な要素です。

発振器の回路タイプ

 モジュール式発振器の回路トポロジは何十年にもわたって開発され、現在利用できる技術が多数あります。ほとんどの場合、回路を改良することで、共振器の出力周波数の精度と安定性が向上しています。前図に示されている例には、非水晶ベースのSAWおよびMEMS発振器が含まれています。水晶発振器に適用されている技術は、どのタイプの発振器にも適用できます。これらの発振器はすべて、15pFの負荷静電容量で動作するものと評価されます。負荷静電容量の変動は、動作周波数に影響します。

 これらのトポロジの比較は、ベア水晶発振器(XO)を基本にしています(図5)。この例は論理ゲートを使用して実装され、チューニングを許可する可変容量ダイオードを含みます。これらのシンプルな発振器は、およそ20~100ppmで周波数の安定性を示します。

図5:論理インバータを使用して実装する基本水晶発振器には、水晶振動子と直列の可変容量ダイオードを経由する電圧制御が含まれます。(画像提供:Digi-Key Electronics)

 AbraconのASV-10.000MHZ-LCS-Tは、面実装水晶クロック発振器です。この発振器には、HCMOS論理レベルのデジタル出力があります。このタイプの発振器の大きなメリットは、低コストであることです。その周波数安定性は±50ppmですが、この発振器ファミリの他のデバイスの安定性仕様は20~100ppmです。
 周波数がずれる主な原因は、温度の変化です。もう1つの原因は、時間の経過に伴う水晶の経時変化または周波数の変化です。経時変化率は、基本の安定性に比例します。この発振器の場合、経時変化率は1年あたり±5ppmです。XOは、高い周波数安定性を必要としない汎用用途に対応します。このような用途には、マイクロプロセッサのクロックソースがあります。

 温度補償水晶発振器(TCXO)では、水晶振動子とアンプの温度関連変化を補償する回路要素が追加されます(図6)。


図6:水晶振動子とアンプは温度の影響を受けるため、TCXOは温度センサと温度補償ネットワークを追加して周波数ずれを補正します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

 サーミスタなどの温度センサは、補正電圧を生じさせるために使用されます。補正電圧は適切なネットワークを通じて、水晶と直列の電圧可変容量ダイオードに適用されます。これは、水晶振動子容量性負荷を変更して機能します。温度補償で周波数安定性を20倍以上向上させることができます。AbraconのASTX-H12-10.000MHZ-Tは、HCMOS出力レベルと周波数安定性仕様±2ppmの標準TCXOです。コストは基本のXOのおよそ3倍です。
 温度を安定化するもう1つのアプローチは、発振器モジュールを温度制御オーブン内に配置することです(図7)。このトポロジは、恒温槽型水晶発振器(OCXO)と呼ばれます。



図7:OCXOは、水晶振動子の周波数対温度曲線の傾きがゼロとなる温度と一致するように設定された温度のオーブンに入れて、発振器の温度を安定させます。(画像提供:Digi-Key Electronics)

 水晶発振器は、温度制御オーブンに配置されています。温度の変化によって発振器の周波数が変化しないように、オーブンの温度は、水晶の周波数と温度を比較した曲線の傾斜がゼロになる値に設定されます。OCXOでは、発振器の安定性が1000倍向上する可能性があります。このような発振器が必要になるのは、ナビテーションシステムや高速シリアルデータ通信など、正確なタイミングを必要とする用途です。

 Connor-WinfieldのDOC050F-010.0Mは、LVCMOS出力レベルを備えたOCXOです。このOCXOに指定されている周波数安定性は±0.05ppmです。この改善された性能は、基本的な水晶発振器と比べて、オーブンやサイズの大型化、コスト(XOの約30~40倍)のために電力消費量の上昇を伴います。

 前述したMEMS発振器は、デジタル制御発振器(DCXO)の一例です。SiTimeの SIT3907AC-23-18NH-12.000000Xは、論理出力がLVCMOS、周波数安定性が10ppmのMEMSベースのDCXOです。このDCXOには、±25~±1600ppmの「プル」範囲を持つ内部PLLを使用して周波数の変更をプログラムする機能があります。

 マイクロコンピュータ制御の水晶発振器(MCXO)は、低電力要件の小型パッケージでOCXOと同等の周波数安定性を備えています。MCXOは、2つのいずれかの方法を使用して出力周波数を安定させます。1つ目は、目的の出力よりも高い周波数でソースの発振器を動作させ、パルス削除を使用して目的の出力周波数を実現する方法です。2つ目は、目的の出力周波数よりも若干低い周波数で内部ソースの発振器を動作させ、内部のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)で生成された補正周波数をソース出力周波数に追加します。

 IQD Frequency ProductsのLFMCXO064078BULKは、周波数安定性が0.05ppmのHCMOS互換のMCXOです。製品ファミリには、10~50MHzの主要な固定周波数の発振器が含まれます。その物理的な体積はわずか88mm3で、3.3Vでわずか10mAのみ必要とし、合計電力消費量は33mWです。

 一部のアプリケーションでは、発振器の周波数を調整する必要があります。これは、デジタル制御でもアナログ制御でも実行できます。アナログ制御は、電圧制御水晶発振器(VCXO)を使用して実現します。図5に、共振器と直列可変容量ダイオードに電圧を印加し、負荷静電容量を変更して、その周波数をシフトすることで発振器を調整する方法を示しています。これは、VCXOの基本原則です。

 Integrated Device TechnologyのXLH53V010.000000Iは、HCMOS出力レベルと±50ppmの周波数安定性を提供するVCXOの例です。VCXOのプル範囲は、制御電圧を変更して実現できる最大周波数オフセットを示しています。この発振器のプル範囲は±50ppmです。公称出力周波数が10MHzの場合、プル範囲は±500Hzです。

 共振器の項で説明したSAW発振器は、高信頼性で特徴付けられるもう1つの低コスト発振器です。EPSONのXG-1000CA 100.0000M-EBL3はSOの一例です。これらのデバイスは、リモート制御のトランスミッタなどの固定周波数用途で使用されます。これらのデバイスは十分な安定性とジッタ仕様を提供しますが、最大のメリットは信頼性です。

発振器と用途の適合

 一般的に、正確な時間基準として発振器を使用している用途には、より適切な周波数安定性を備えたデバイスが必要です。同様に、GPS関連の用途は、OCXOまたはMCXOベースの発振器に適合します。衝撃や振動からの隔離が必須の場合、SO発振器はその用途に最適です。高速シリアルインターフェースのクロックには、低タイミングジッタが必要です。

 コストはどの設計にも含まれる1つの要素で、一般的に提供されている周波数安定性の度合いによって変わります。サイズや電力要件など他の要素は、使用している技術に基づくデバイス依存です。これらの要素には、エンジニアリングのトレードオフが必要になる場合があります。この記事で取り上げた発振器の主要仕様の比較を表1に示します。この表を参考にして、個々の機能やメリットの詳細を確認できます。


(注) a:位相ノイズから計算された推定値、b:起動/安定状態
表1:各種発振器を比較するために使用する標準パラメータです。各パラメータは、設計要件と設計時のコストや可用性などの他の要素に基づいて選択されています。(表提供:Digi-Key Electronics)

 この表の発振器は、周波数安定性に基づいた順序になっています。この記事では特定の出力周波数が使用されていますが、これらの発振器はすべて、モデルシリーズごとに出力周波数の範囲を提供しています。

まとめ

 設計者は、発振器の構造と動作を十分に理解すると、用途の要件に最適な発振器を特定する際に非常に役立ちます。設計プロジェクトに使用する発振器の選択には、常にエンジニアリングのトレードオフ(コスト、電力、スペース、安定性、精度など)が伴いますが、現在提供されているさまざまな発振器によって、これらのトレードオフは既製品のソリューションで最小限にすることができます。


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