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アイドル状態での効率的なタイムキーピングによりウェアラブル機器の電池寿命を延長

著者 Stephen Evanczuk 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-10-23
マルツ掲載日:2020-01-20


 ユーザーにとって、ウェアラブルなどのパーソナル電子機器の電池寿命は、製品購入の決め手になる重要な要素です。電池寿命を最大化するため、開発者は通常、このような機器の長いアイドル時間を利用して、ユーザーによる操作が必要になるまでマイクロコントローラなど消費電力の高い部品が低電力のスリープになるように設計します。しかし、最も低電力なスリープ状態にあっても、実時間を維持し、スケジュール化されたイベントを管理するには、システムに正確なリアルタイムクロック(RTC)が必要になります。

 開発者には、スリープ状態での正確なタイムキーピングをサポートする多くのオプションがありますが、その中で昨今の消費電力低減と設計サイズ縮小の両方の要求を満たすオプションはごく少数です。

 この記事では、Maxim Integratedの高電力効率のRTCチップを超低電力マイクロコントローラと組み合わせて使用することで、ウェアラブルやIoTデバイスなど、サイズと電力の両面で制約のある各種製品の電池寿命をいかに延長できるかを紹介します。

基本的なタイムキーピング

 RTCは、実世界のクロックやカレンダに基づいてユーザーや他のシステムと対話的に機能する必要がある大半の製品設計で基本機能としての役割を担います。RTCのコアでは、水晶発振器回路と一連のレジスタが組み合わされており、レジスタにはカウントダウンチェーンから蓄積された日付と時刻のデータが保持されます(図1)。

図1:基本的なRTCタイムキーピング回路では、水晶発振器がカウントダウンチェーンを駆動し、日付と時刻の値を保持するレジスタを更新します。(画像提供:Maxim Integrated)

 RTCデバイスは、このような基本設計に始まり、幅広いアプリケーションでのタイムキーピングの精度と機能性に対するニーズを満たすような、さまざまな機能を提供するように進化しています。今では開発者は、さまざまな動作電圧、内部メモリ容量、幅広い機能セットをサポートする各種のRTCデバイスを見つけることができ、それらは単なる実時間や日付の維持を超える機能を発揮します。

 しかし、アプリケーションの数が増えるにつれて、タイムキーピング機能はRTCデバイスを選ぶ唯一の選択基準ではなくなっています。設計者がウェアラブルなど小型の電池駆動製品への要望に応えようとするのにともない、システム全体の消費電力へ及ぼすタイムキーピングの影響への意識が高まっています。

 システムは最も低電力のスリープ状態であっても実際の時刻を維持する必要があるため、設計者は、タイムキーピング電流の最適化がこれらの製品で重要な要件になりつつあると認識しています。同時に、あらゆる有用なタイムキーピングソリューションで、製品設計の簡潔さとフットプリントの厳しい制約を満たす必要があります。

マイクロコントローラに搭載されたRTCのトレードオフ

 アプリケーションによっては、設計者は別個のRTCデバイスを加えようとはせず、多くのマイクロコントローラに組み込まれたRTC機能に依存する場合もあります。もちろん、すべてのマイクロコントローラにRTCが組み込まれているわけではありません。RTCを組み込んだマイクロコントローラでは、一般的に、アプリケーションのタイムキーピング精度要件を満たすために、RTC出力を定期的に再較正する必要があります。

 この再較正を実施するにはハードウェアとソフトウェアの追加が必要なだけでなく、クロックエラーが積み重なる場合があり、エラーが再較正の閾値に達する前に不正確なデータタイムスタンプが生じる原因にもなります。

 このようなエラーはデバイスの時刻をネットワークと同期させることで修正できますが、低電力設計のベストプラクティスでは、ネットワーク接続を最小限に抑えて、多くの電力を必要とする無線トランシーバがアクティブになる時間を短くすることが求められます。明らかなのは、マイクロコントローラに統合されたRTC機能を使おうとすれば、高精度で低電力の製品を設計する開発者は多くのトレードオフに直面する、ということです。

 超低電力マイクロコントローラ、たとえばMaxim IntegratedのDarwinファミリなどのデバイスは、低電力動作に特化して開発された機能によって、これらの懸念に対処しています(「より効果的なスマートデバイスの構築:第1部 - MCUとPMICの低電力設計」を参照)。

 たとえば、RTCが有効でSRAMが保持されない最低電力の「バックアップ」モードでは、Maxim Integratedの超低電力MAX32660 Darwinマイクロコントローラの消費電流は1.8V電源で約630nAです。バックアップモード(およびすべての動作モード)では、RTC回路は450nAに相当し、これは多くのスタンドアロンRTCデバイスを下回ります。

 電池寿命を最大化しようとする開発者向けに、MAX32660にはより低い電力のオプションがあります。最低電力バックアップモード(SRAM保持なし)でRTCが無効になる状態では、MAX32660が使用するのは200~300nAのみです。この値と、RTC対応バックアップモード電流(630nA)とRTC回路電流(450nA)の差とにある明らかな相違は、これらの特定の動作状態に関係するさまざまな回路動作に関連します。もちろんこのアプローチの場合、設計者は、マイクロコントローラのRTCよりも正確かつ低消費電流で動作する外付けRTCデバイスを見つける必要があります。

 Maxim IntegratedのMAX31341B低電力RTCを利用すると、開発者はクロック精度の要件に応えながら、高機能なマイクロコントローラで提供される最低電力を突き詰めたモードをフルに活用できるようになります。しかも、オフライン動作の時間が延びても、そのような活用は可能です。

効率的なタイムキーピング

 Maxim IntegratedのMAX31341Bは、スペースに制約のある電池駆動式の製品設計の領域で増えている、小型超低電力RTCデバイスの需要に対応します。以前のRTCとは異なり、MAX31341Bは基本的なタイムキーピング動作中にわずか180nAしか消費しません。また、2mm×1.5mmの小型ウェーハレベルパッケージ(WLP)に基本機能を統合しています(図2)。

図2:Maxim IntegratedのMAX31341Bは完全なRTC機能を2mm×1.5mmのパッケージに統合されており、タイムキーピング電流180nAを消費します。(画像提供:Maxim Integrated)

 MAX31341Bは、正確な日付/時刻データとともに、多くのアプリケーションで使用される時間ベースのアラート機能を備えています。オンチップ制御ロジックはカウントダウンタイマ、アラームペアを管理し、これらはデバイスのØINTAとØINTBピンを介して出力割り込みを生成できます。

 開発者はデバイスを再構成することで、ØINTAをCLKIN入力として使用し、外部クロックにRTCカウンタを駆動させることができます。同様に、ØINTBをCLKOUTとして使用し、レジスタ設定によるプログラマブル出力周波数で矩形波を任意の分周カウンタに出力できます。

 またデバイスは、D1デジタル入力ピンやAINアナログ入力ピンからの入力に応答して割り込みを生成するようにプログラムすることもできます。アナログ入力の場合、AINの信号が4つのプログラムされた閾値(1.3V、1.7V、2.0V、2.2V)のいずれかによって上昇や下降するとき、割り込みが生成されます。このモードで動作している場合、たとえばRTCの電源電圧が閾値を下回ったときや復元されたとき、MAX31341Bはホストプロセッサに信号を送り、ホストが適切に対処できるようにします。

 AIN入力は、MAX31341Bの電力管理機能でも重要な役割を担い、この機能により、一次電源が利用できなくなったり閾値を下回ったりした場合に、デバイスへの電力を維持する手段を得られます。MAX31341Bでは、開発者は充電式電池やスーパーキャパシタなどの外部電圧源をハードウェア設計に追加するだけです。対応するソフトウェア設定も同様に簡単で、デバイスの電源管理レジスタでビットを設定することにより、デバイスを自動電源管理用に構成するだけです。

 このモードでプログラムされた場合、MAX31341BのAINピンは、選択可能なダイオード、ツェナー、3つの内部抵抗のいずれかの経路で構成されるトリクル充電チェーンの出力として機能し、目的の充電電流レベルを設定できます(図3)。

図3:Maxim IntegratedのMAX31341B RTCはトリクル充電チェーンを統合しており、開発者はチェーンと充電電流レベルをプログラムで設定できます。(画像提供:Maxim Integrated)

 このモードでの通常動作は、デバイスは一次電圧源、VCCから、標準でμAレベルのトリクル充電電流を消費します。同時に、MAX31341BはVCCとバックアップソースの両方を監視し、AINポートを使用してバックアップ電源電圧レベルを追跡します。VCCがAINピンでの測定電圧値を下回ると、MAX31341Bはトリクル充電チェーンを自動で無効にして、AINを介して電源をバックアップに切り替えます。

開発サポート

 Maxim Integratedは、MAX31341EVKIT、評価ボード、付随する評価ソフトウェアアプリケーションにより、MAX31341Bのハードウェア構成やプログラム可能な機能に関心のある設計者をサポートします。評価キットの回路図に示されているように、MAX31341BをEatonのKW-5R5C334-Rスーパーキャパシタなどのバックアップ電圧源に直接接続するだけで、開発者はバックアップハードウェア設計を実現できます(図4)。

図4:Maxim IntegratedのMAX31341EVKITボード回路図のこの部分は、タイムキーピング電圧源バックアップのためにMAX31341Bで必要なのは、そのAINピンから充電式電圧源(評価ボードで使われるEaton KW-5R5C334-Rスーパーキャパシタなど)への直接接続だけであることを示しています。(画像提供:Maxim Integrated)

 評価ソフトウェアは、USB経由でMAX31341B RTC評価ボードに接続されたパーソナルコンピュータで実行され、その画面には、デバイスのタイムキーピング結果の監視用タブと、割り込みとレジスタ設定用のタブが表示されます。このソフトウェアを使用して、デバイスを電源管理モードで動作するように設定し、トリクル充電パスを設定するデバイスのオプションを表示して選択できます(図5)。

図5:Maxim IntegratedのMAX31341B RTC評価キットソフトウェアには各種のメニューがあり、デバイスのレジスタを設定し、電力管理モードやそのトリクル充電チェーン構成などの特別な機能をプログラミングできます。(画像提供:Digi-Key)

 図4の回路図で示唆されているように、MAX31341B RTCを使用して作成されたシステム設計は、ハードウェアインターフェースの機能ブロック図とほぼ同様に簡潔です(図6)。

図6:開発者は、水晶発振器、オプションのバックアップ電圧源、少数の受動部品などを用いるだけで、Maxim IntegratedのMAX31341B RTCをシステム設計に追加できます。(画像提供:Maxim Integrated)

 バックアップ電圧源と同様に、必要な外部水晶発振器を統合する際に、追加の部品は必要ありません。これまでのRTCデバイスとは異なり、MAX31341Bでは最大100kΩの等価直列抵抗(ESR)とともに水晶発振器を使用しますが、以前のデバイスで可能だった範囲よりも幅広い水晶発振器から選択して使用できます。

 ホスト側については、MAX31341BはシンプルなI2Cシリアルインターフェースを備えており、Maxim IntegratedのMAX32660 Darwinマイクロコントローラなどのプロセッサとの対話的な機能に対応します。このインターフェースを使用することにより、ホスト上で実行するソフトウェアコードは、わずかな命令だけでMAX31341Bの動作を管理し、時間データと日付データに継続的に、またはシングルバーストでアクセスできます。

 MAX32660とMAX31341Bを使用することで、開発者は正確なタイムキーピングに依存する多くのアプリケーションでのニーズを満たす超低電力設計を実装できます。実際には、標準的な水晶発振器で生じるRTCクロックエラーは、特に広範な温度範囲での動作が必要なアプリケーションなど、用途によっては問題が生じる原因にもなります。
 標準的なRTC設計で使用される音叉型水晶振動子発振器では、100万分の1(ppm)単位で表されるエラー率は、頂点温度(エラー率の変化がゼロになる点)に対して温度が下降または上昇すると増加します。大半の32kHz水晶振動子の場合、頂点温度は20℃~30℃の範囲です。この範囲の外では、標準的な水晶振動子の温度係数は-0.02~-0.04ppm/℃^2となり、ユーザーが遭遇するかもしれない高温や低温でのエラー率は2桁になります。

 たとえば、MAX31341EVKIT評価ボードで使用されるECSのECS-.327-6-12-TR水晶振動子のデータシートには、頂点温度と温度係数の公称値としてそれぞれ25℃と-0.03ppm/℃^2が規定されています。これにより、RTCクロックのMAX31341Bのエラー率はこれらの特性に準じます(図7)。

図7:Maxim IntegratedのMAX31341B RTCのクロックエラーは外部の水晶発振器の性能で決まり、水晶振動子の温度係数により決まる割合で水晶振動子の頂点温度から低下します。(画像提供:Maxim Integrated)

 より極端な温度で示される20ppmのエラー率であっても、それに相当するクロックエラーは月に1分ほどです。もちろんこのエラー率の影響は、たとえば橋に組み込まれた構造完全性モニタと比べて、個人用のフィットネスウェアラブルでは大幅に異なります。それほどクリティカルでないデータでは、ネットワークリソースによる定期的な修正とも考えられます。

 クリティカルな用途の場合、設計者はその重要なデータに関連するタイムスタンプのRTCエラーを補正するか、温度補償水晶発振器(TCXO)(たとえば-40℃~+85℃の温度範囲全域で5ppmの安定性の仕様を備えたSiTimeのSIT1552AI-JE-DCC-32.768Eなど)を使用する必要があります。

まとめ

 長いアイドル期間中の消費電流は、ウェアラブルなどのモバイル製品のようにスペースに制約のある小型デバイスの電池寿命を制約する顕著な要因となりつつあります。これらのシステムでは一般的に、アイドル期間中に大半の部品が低電力スリープ状態になっても、現在の時刻と日付を正確に維持する機能が欠かせません。超低電力マイクロコントローラでは、統合されているリアルタイムクロック機能を使用する場合に、最低レベルの消費電力を実現できない場合もあります。

 低電力ソリューション向けに特化して設計されたMaxim IntegratedのRTCデバイスにより、開発者はナノアンペア単位の低消費電流で正確なタイムキーピング機能を維持できます。これにより、他のシステム部品がアイドル期間中に最低電力の動作モードでスリープ状態になり、モバイル製品設計で電池寿命を最大化できます。



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