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ピエゾ素子ドライブに特化したピエゾ素子駆動用PWMアンプモジュール【IFJM-001】を利用したピエゾウーハーの開発事例をご紹介します。


ピエゾ素子駆動用アンプモジュールIFJM-001についてはこちらもご覧下さい。

PWMアンプとピエゾ素子ドライブアンプ

 2000年以降、オーディオ用アンプとしてD級アンプが急速に普及し、今では主流と言っても過言ではない状況となっています。D級アンプが普及した理由は、D級アンプがPWMアンプであり、PWM制御によって従来のリニア方式アンプに比べ大幅に効率を向上させ、熱やサイズの削減も可能にしたからでした。
これは、電源が高効率化や小型化の要求を受け、リニア方式よりスイッチング方式が主流になりつつあるのと同様で、世界的な課題である省エネルギーに対応するため、ドライバも含めたアンプ類も高効率化が必須となっていることを示しています。

 オーディオではPWMアンプが台頭する現状において、産業分野や特殊な用途では未だにリニアアンプが主要なアンプとして使われています。その1つの例がピエゾ(圧電)素子ドライブ用のアンプ(ピエゾドライバ)です。当然のことながら、産業用途のピエゾドライバにも高効率化と小型化の要求は高まっており、ピエゾドライブ用の高電圧出力リニアドライバ(アンプ)は効率が低いことに加えて、大きい、重い、高価であることが指摘されています。しかしながら、市場の特性や、既存のPWMアンプでピエゾ素子をドライブする技術的な課題もあり、対応するPWMアンプがほとんどないことからピエゾドライバのPWM化は遅れてしまっています。

ピエゾ素子の駆動力を高めつつ低消費電力化を図る高電圧低電流ピエゾドライバ

 IFJM-001 PWMアンプモジュールは、ピエゾ素子の駆動力を高めつつ低消費電力化を図るために、高電圧低電流ドライブができるピエゾ用アンプとして開発されました。
ピエゾの駆動力を上げるには、一般にピエゾ素子を積層化するか、ドライブ電圧を上げるという方法がありますが、既存のPWMアンプであるオーディオ用D級アンプで対応するにはいくつか課題がありました。
積層化したピエゾ素子は低電圧でのドライブとなり、低電圧オーディオ用D級アンプを使用することになります。この場合、積層化によってピエゾ電流が増加することから、低電圧で高い電流ドライブ能力が要求されるので、低消費電力化は困難になります。
 ドライブ電圧を高くするアプローチには、高電圧オーディオ用D級アンプを使用できます。しかしながら、現状の高電圧出力アンプは高電力出力用途のものがほとんどで低消費電力化には適していません。
そこで、高電圧低電流ドライブのピエゾドライブ用PWMアンプモジュールを開発し、低消費電力化とローコスト化を実現しました。  

高効率とモジュール化のメリット

 IFJM-001 PWMアンプモジュールによるピエゾドライバのPWM化は、オーディオアンプの例に違わず、リニアアンプに比べ大幅に効率が向上し消費電力の削減につながります。また、損失の減少により発熱が低減されることから、ヒートシンクサイズを小さくできるなど、ソリューションサイズの小型化が可能です。リニアアンプを使用した既存のアプリケーションにおいて同じドライブ(出力)電力で使用する場合はより小型にでき、逆に、既存のサイズのまま、もしくはそれ以下のサイズでドライブ電力の増強が可能になります。

 また、PWMアンプのモジュール化は、ユーザーに設計時間の短縮、ピエゾの高電圧ドライブに最適化された性能と安全性の確保、最適な周辺部品や基板レイアウトよる小型サイズを提供します。PWMアンプはスイッチング技術の応用であり、スイッチング電源がそうであるように設計にはスイッチング回路に関する知識と経験が必要です。このモジュールには、インフィニオンの技術と回路設計のノウハウが凝縮しており、経験に基づく保護回路の搭載も含めるとそのメリットは非常に大きいものです。また、このモジュールの仕様がアプリケーションに合わない場合は、条件によってカスタム対応や開発受託などが可能となっています。

ピエゾアプリケーションの性能向上と新たな可能性

 このPWMアンプモジュールは、ピエゾアクチュエータやピエゾスピーカーのドライブを念頭に開発されています。現状では、インクジェットプリンタ、ポンプ、フローコントローラなどのピエゾ応用機器、ハンディ拡声器、設置型や天井埋め込み型のピエゾスピーカーやハイインピーダンススピーカーなどのアプリケーションがあります。   また、リニアリティの高いドライブが可能になっていることから、ピエゾアクチュエータを使ったアプリケーションやピエゾスピーカードライブ時の性能が上がるだけでなく、ピエゾアプリケーションの新たな可能性が広がることが考えられます。

      

図2: リニアリティの高いドライブ性能を活かしたアプリケーションの可能性

ピエゾウーハーの開発事例 実用化には至っていないピエゾウーハー

  ピエゾウーハーとは、ダイナミックスピーカーの磁気回路(マグネット、ボイスコイルなど)の代わりに、ピエゾアクチュエータを駆動源として使用したものです。

     

図3 左:インフィニオン社のピエゾウーハー試作機 / 右  CES2017 Infineon audio booth でのピエゾ素子駆動用PWMアンプ実動展示の様子
 

 従来、ピエゾ素子は小型ユニット用やホーンスピーカー用など小型薄型に特化したものがほとんどであり、これらは低域を出すには不向きでした。もちろん大型のピエゾアクチュエータを利用すれば低域用スピーカーも実現できるのですが、コスト面で不利であり、何よりも適したアンプが無く、またピエゾ=ツィターという概念もあり実用化には至っていませんでした。

   

図4 左:小型ピエゾユニット   右:大型フルレンジ・ピエゾ・ユニット

 ピエゾスピーカーはこれまで「薄型」であるという構造面が主に注目され、薄型構造が生きる場面でダイナミックスピーカーの置き換えに活用されて来ましたが、コストパフォーマンスにおいて完成度の高いダイナミックスピーカーのシェアを奪うには不十分でした。特に駆動用アンプとしてピエゾ専用のものが必要となるため、広く普及していない現状においては割高になるという問題がありました。

ピエゾスピーカーはウーハーに適している

 ピエゾ素子は等価的にキャパシタンスであるため、スピーカーに応用した場合、低域になればなるほど消費電力が下がります。特にピエゾを電力を必要とするサブウーハーに応用することによって、アンプ、スピーカーでのコストアップ分を遥かに超える電源部のコストダウンが可能になります。

図5 周波数特性 

マルツエレック(2018-06-25)   

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